「課題文」
For weeks, Donald J. Trump has romped through Iowa and New Hampshire without breaking a sweat, muscling out rivals for the Republican nomination and soaking up adoration from crowds convinced he will be the next president of the United States.
But as Mr. Trump marches steadily toward his party’s nomination, a harsher reality awaits him.
Outside the soft bubble of Republican primaries, Mr. Trump’s campaign is confronting enduring vulnerabilities that make his nomination a considerable risk for his party. Those weaknesses were laid bare in New Hampshire on Tuesday, where independents, college-educated voters and Republicans unwilling to dismiss his legal jeopardy voted in large numbers for his rival, Nikki Haley.
「訳例」
数週間にわたって、ドナルドJ・トランプは共和党の指名候補者たちを踏み倒し、トランプが合衆国の次期大統領になると確信している群衆からの熱烈な支援を受けながら、アイオワ州とニューハンプシャー州を苦もなく勝ち抜いてきた。
しかし、トランプ氏が共和党の指名獲得に向け手堅く進むにつれて、より厳しい現実が彼を待ち受けている。
共和党の予備選がやや過熱気味になる反面、トランプ氏の選挙活動は、彼を指名することで共和党にとって大きなリスクを抱えることになる今後の組織的脆弱性に直面している。この脆弱性は火曜日、ニューハンプシャー州で露呈した。というのは、当地において無党派層やトランプの法的危険性を無視することに快く思わない大卒の有権者や共和党員など多くの者たちが、対立候補のニッキー・ヘイリーに投票したからだ。
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分析①(概説)
第1段落:Donald J. Trump has romped through Iowa and New Hampshire without breaking a sweat, muscling out rivals for~ and soaking up adoration from crowds~.
今回のテーマは、「カンマ記号の多様な用法」についてです。
前半では今回の課題を巡る「カンマ記号」の用法とその影響について構造的に示し、そして後半では、その訳出法を明らかにします。
Trump has romped through~ without breaking a sweat, muscling out rivals~ and
soaking up adoration~
⇒(1) S+V without+V1-ing, V2-ing and V3-ing
⇒(2) A, B, and C (A and B and C)
⇒(3) A, B and C
3つの構成要素A・B・Cの関係をカンマ記号によって示す場合、考えられる方法は上記の展開式(2)と(3)です。
展開式(2)は、3つの構成要素A・B・Cが対等の関係で並んでいるのですが、その前提としてそれぞれの構成要素には性質(品詞)及び表現構造が同一でなければなりません。
しかし、展開式(3)の場合、それぞれの構成要素の関係を展開式(2)のように一律に捉えることはできません。
ところで、仮に、それぞれの構成要素の間に同一の「性質(品詞)及び表現構造」があっても、展開式(2)の用法もあるし、また構成要素B・Cが構成要素Aの具体的説明のための「挿入語句」の用法もあるのです。
勿論、前者のようなそれぞれの構成要素の間に同一の「性質(品詞)及び表現構造」があっても、構成要素Aと構成要素B・Cとの間には、内容的に異質な関係(A, B=Cのような関係)がある場合に用いられる表現法でもあるのです。これを、日本語で正確に訳し分けることは、日本語の非科学性によって不可能です。
この課題文は、表面的に見ると展開式(3)の表現法であることから、上記した展開式(2)の側面を持つと誤解した答案もあったし、また構成要素B・Cの用法を捉え間違いした答案も多くあったのです。例えば、V2-ingとV3-ingを「分詞構文の等位接続詞andの省略」と捉えたものなどがありました。
要するに、上記の客観的な展開式だけで、カンマ記号の用法も、また構成要素B・Cの用法も捉えることはできないわけで、最終的には構成要素に使用されている「単語の種類(単語の含意である意味内容)」が決定基準になるということです。
今回のカンマ記号による表現法と、その訳出法は以下の「でんしゃ理論」で明らかにしましょう。
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分析②(理論)
さて、この課題問題について幾つかの答案の中に、上記で示した展開式(1)を形式的に展開式(2)のように捉えて、構成要素B・Cの性質を構成要素Aと同様に、前置詞withoutの目的語、即ち「動名詞」として訳出したものがありました。
もしそれが正しい決定であれば、基本的な表現法は展開式(2)のようになっているはずです(カンマ記号が2つ必要となる)。しかし、課題文は、展開式(3)の表現法であることから、今一度「構成要素に使用されている「単語の種類(単語の含意である意味内容)」を確認しなければなりません。
また、すべての構成要素が動詞の原形(V)にingを付加した形式であることから、「nexusの法則」が成り立ち、そのことから見ても構成要素B・Cは、述部である本動詞の表現has rompedの「背景的表現」であることが分かるのです。
要するに、構成要素Aは「動名詞」であり、そして構成要素B・Cは「現在分詞による分詞構文」ということになるのです。
ここで、一言付け加えておきますが、この分詞構文を「結果」として捉えた答案が非常に多くありましたが、その間違えはnexus法則を前提とした「本動詞と現在分詞の原形動詞の関係」に意識を向けなかったことから生じたものです。
要するに、英文構造を形式的に捉えるだけではなく、使用された構造物の「意味内容(含意)」にも意識を向けなければならないということです。
結論的に述べると、これらの分詞構文(V2-ingとV3-ing)は、本動詞に付加して本動詞の背景を述べた「分詞構文の付帯状況(~しながら)」ということになります。