「課題文」
Spiraling geopolitical tensions have pushed the world to a “historic turning point” and are forcing Japan to change its defense posture, Japanese Prime Minister Fumio Kishida told CNN Sunday ahead of a closely watched summit with US President Joe Biden next week.
“As we are witnessing Russia’s Ukraine aggression, the continuing situation over the Middle East, as well as the situation in East Asia, we are faced with a historic turning point,” Kishida said during an interview at his private residence in Tokyo.
“That is why Japan has made a decision to fundamentally reinforce its defense capabilities and we have greatly changed Japan’s security policy on these fronts,” he said.
「訳例」
急激に悪化する地政学的情勢によって、世界は「歴史的転換点」に追い詰められ、そして日本は防衛態勢を変更せざるを得なくなっていると、岸田文雄首相は日曜、来週開催予定の注目されているジョー・バイデン米大統領との首脳会談を前にCNNに語った。
岸田首相は、「東アジア情勢だけではなく、ロシアによるウクライナ侵攻、いつまでも決着のつかない中東情勢を目の当たりにしていることから、我々は歴史的転換点に立っている」と、岸田首相は東京の私邸での記者会見で述べた。
「そういうわけで、日本は防衛力を抜本的に強化することを決断し、またこれら軍事的側面における日本の安全保障政策を大幅に変更した」と、首相は述べた。
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一、分析①(概説)
今回の解説は、第3段落の’That is why Japan has made a decision to fundamentally reinforce its defense capabilities~ ‘です。
この解説のポイントは、「文頭システム that is why-cl」です。
前半の解説では、この課題における「文頭システム」について取り上げ、そして後半の解説では、その訳出法について取り上げます。
「 That is why Japan has made a decision to~ 」
□ That is why について:
⇒ 1) That is (the reason)why-cl(S+V+C)
⇒ 2) For that reason, S+V(adv-phr, S+V)
□ That is howについて:
⇒ 1) That is (the way)how(S+V+C)
⇒ 2) In that way, S+V(adv-phr, S+V)
英文は「nexus法則」の構造によって表現されることから、文意の中心は当然のことながらこの「nexus法則」に従っています。
しかし、その表現法が単一の「単文」とは限らず、それ以外に複文や重文、さらには混文まであるのです。そして、例えば複文の場合、文意の中心が「主節」で表現されるとは限らないのであって、「従属節」で表現されることもあるのです。
そうであれば、その「主節」に当たる表現法は「単文」でいうと、どのような役割(機能)を果たすのか?ということになります。つまり、従属節に対して主節はどのような役割を果たしているのか?ということです。この問題は、複文形式の構造を持った表現法全てに該当する問題でもあるということになります。
要するに、「that-cl表現法」すべてに該当する問題でもあるということです。
結論から先に言うと、構造論的には主節を構成しているけれども、意味論的には「副詞ないしは副詞相当語句」とらえることができるのです。言い換えると、nexus法則に従って主節は従属節の構造形態を決定しているのですが、意味論的には従属節の補完の役割を果たしているに過ぎないのです。
これを示したのが、上記した2つの展開式です。これを概念的に「文頭システム」の一形式であると捉えるのです。
詳細は、「実践から学ぶ英語翻訳法(再改定版)」、「 The Train Theoryを学ぼう(初版)」をご覧ください。後者は、2024年出版予定。
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二、分析②(理論)
英文を翻訳する場合(訳出法と日本語表現法)、(1)構造的に捉えるだけではなく機能的に捉えねばならないということ、そして(2)仮に機能的に捉えたとしても、その訳出が日本語表現法に合致するかということが問題になるのです。
今回の課題を見ると、従属節である「関係詞節」が用いられ、その先行詞the reasonが「主節」の文要素を構成する典型的な「文頭システム」の構造になっているのです。
この「文頭システム」の役割(機能)を、上記のように「単文」から見て一般的に「副詞ないしは副詞相当語句」と捉えることができるのですが、さらに一歩深めると「副詞ないしは副詞相当語句」に加えて、「副詞接続詞(接続副詞ともいう)及び助動詞」の役割を認めることもできるということです(副詞の構造的機能の多様性)。
最後の事例として、副詞接続詞ではtherefore、nevertheless、consequentlyなどがあげられ、助動詞では一般的にmay、canなどがあげられます。
また、「文頭システム」の類型化については上記した2つの拙著(「実践から学ぶ英語翻訳法(再改定版)」、「 The Train Theoryを学ぼう(初版)」)の中で取り上げる予定です。
□ That is why の訳出:そういった理由で、そのようなわけで
□ That is howについて:そういった方法(やり方)で、そのような方法で