「課題文」
Indian Prime Minister Narendra Modi told Russian President Vladimir Putin on Tuesday that the death of innocent children was painful and terrifying, a day after a lethal strike on a children’s hospital in the Ukrainian capital Kyiv.
The visiting Indian leader used emotive language to deliver an implicit rebuke to Putin at a summit intended to underscore the deepening partnership between their two countries.
Winding up his two-day trip, the two sides set out nine key areas for closer cooperation, ranging from nuclear energy to medicine, and said they aimed to boost bilateral trade by more than half to hit $100 billion by 2030.
「訳例」
インドのナレンドラ・モディ首相は火曜、ロシアのウラジミール・プーチン大統領に対して、罪のない子供たちの死亡は痛ましく恐ろしいことだと述べた。それは、ウクライナの首都キーウにある小児病院へ行われた致死的な攻撃の翌日のことだ。
ロシアを訪問中のインドの指導者は、両国間の深まるパートナーシップを強調することを意図した首脳会談で、プーチンに対し感情的な言葉を使って暗に非難した。
2日間の旅を終えるに際して、両国は原子力エネルギーから医学にわたるより密接な協力に向けた主要9分野を設定し、さらに両国間の貿易を2030年までに1000億ドルに達するよう現在の1.5倍以上に拡大させることを目指すと述べた。
一、分析①(概説)
今回の解説は、第2段落の’The visiting Indian leader used emotive language to deliver an implicit rebuke to Putin~’と、第3段落の’They aimed to boost bilateral trade by more than half to hit $100 billion by 2030.’です。
この解説のポイントは、「本動詞とto不定詞との関係」です。
前半の解説では、この課題における「本動詞とto不定詞との関係」について、構造的視点から取り上げ、そして後半の解説では、その訳出法について取り上げます。
□The Indian leader used emotive language to deliver an implicit rebuke~
(構造式)used+ O to-inf (動詞useとto-infの関係)
⇒ V+O+ adv-phr / V1+O1, and so V2+O2
□They aimed to boost bilateral trade~ to hit $100 billion~
(構造式) boost+ O to-inf (動詞useとto-infの関係)
⇒ V+O+ adv-phr / V1+O1, and so V2+O2
上記のように2つの事例を挙げて、「本動詞とto不定詞との関係」を考えます。
何れの構造式と展開式にも示したように、それぞれの「to不定詞」が本動詞との間でどのような関係にあるのかということです。
要するに、構造論的には何れの「to-inf」も本動詞から見ると「付加的構造物」であることから、その結果として本動詞との「効力関係(力関係)」は「主従関係」が成立するということになりそうなのですが、その理論構成は正しいのか?ということです。
上の構造式の本動詞useは「過去形」であり、下の本動詞boostは「原形」であることが、「to-inf」の構造的評価、即ち本動詞との間の「効力関係(力関係)」に何らかの影響があるのかという問題もあるのです。
これらの問題は、本動詞の「構造的機能」と「日本語表現法」にまたがる問題でもあることから、下記の訳出法の中で具体的に説明します。
二、分析②(理論)
さて、「本動詞とto不定詞との関係」の問題ですが、この「to不定詞」の構造的評価は言うまでもなく「本動詞の構造的機能」によって判断しなければなりません。
要するに、本動詞から見て「文要素」(言い換えると、主要構造物)になるのか、それとも「修飾語句」(言い換えると、付加的構造物)になるのかということです。
「主要構造物」になるのであれば、「to-inf」は動詞の原形から構成されているために、本動詞と「対等の関係」に立つことになります。一般的に、その場合にはandやbutなどの等位接続詞によって本動詞と繋がるのです。「to-inf形」であっても価値的に本動詞と「対等関係」に立つことができるのです。
その場合には、上記の2つの展開式の後半部分の展開式ということになります。つまり、訳出に際して、「そして、しかし」などの訳出が可能となるのです。
しかし、2つの構造式の本動詞useとboostの「構造的機能」は「完全他動詞」であって「不完全他動詞」ではないために、何れの「to-inf」も「付加的構造物(本動詞への修飾語句)」ということになるのです。
つまり、その訳出は「目的(~のために)」となるのです。
ところが、ここで一つの問題があるのです。上の構造式の動詞useは「過去形used」になっているのです。つまり、本動詞が過去形になった場合には、訳出する上で不定詞の「目的が結果に」価値的に変化するということです。
別表現すれば、2つの動詞の間に「手段―結果の関係」が生まれるということです。
ということは、日本語の訳出表現において「to-inf」を「目的訳と結果訳」の何れを採用するかは、ケース(文章の流れ)によることになります。