「課題文」
Just a few weeks ago, Democrats dreaded Biden’s small and glum campaign events when the 81-year-old president’s stumbles revived memories of his disastrous Atlanta debate performance.

Now, they have a candidate and a running mate who can draw a massive crowd, inspire the base and project vigor and hope in a way that will take the battle to Trump over the frenetic last three months of the campaign.

Multiple rallygoers Tuesday expressed delight at the extraordinary twist in their fortunes at an event that conjured flashbacks to Barack Obama’s hope-and-change rallies of 2008, especially when the crowd chanted “Yes We Can” when Harris pledged to save the Affordable Care Act.

音声解説はこちらからどうぞ                    

「訳例」
ほんの2~3週間前、民主党は81歳の大統領の足元が不確かなことから、アトランタでの惨憺たる討論会の記憶がよみがえると、バイデン氏の選挙イベントが小規模で陰気なものになるのではないかと恐れをなしていた。

しかし今や、彼らには圧倒的な群衆を引き付け、支持母体を奮い立たせ、そして選挙戦最後の熱狂的な3か月間、トランプとの戦いに挑むことのできるやり方で、活力と希望を爆発させることのできる大統領候補と副大統領候補がいる。

火曜日開催のイベントに集まった様々な参加者たちは、そのイベントで特にハリス氏がオバマ・ケアの堅持を約束すると、一体となって「Yes We Can」と連呼した時、2008年のバラク・オバマの hope-and-change 集会の記憶を呼び起こすことになった自らの運命の劇的な展開に歓喜した。
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一、分析①(概説)
今回の解説は、第3段落の’Multiple rallygoers expressed delight at the extraordinary twist in their fortunes at an event that conjured flashbacks to Barack Obama’s hope-and-change rallies of 2008,~’です。

この解説のポイントは、「関係代名詞と先行詞(antecedent)の関係」です。
           
前半の解説では、この課題における「関係代名詞と先行詞の関係」について、構造的視点から取り上げ、そして後半の解説では、その訳出法について取り上げます。
 
□ ~ at the extraordinary twist in their fortunes at an event that conjured
flashbacks to~    

       (構造式)the twist that conjured flashback~(thatの先行詞はどれか?)

           ⇒ N +that V+O
⇒ N +that(N = S) V+O

関係代名詞の働きには2つあって、その一つは関係代名詞自らが抱える関係詞節(文要素の従動詞と言ってもよい)を前方にある主節の構造物である「名詞=先行詞((antecedent))」(原則は「名詞」ですが、場合によって、形容詞や副詞、また語句や節形式もあります)に「繋ぐ(接続)」働きです。

そのことから、関係詞の一般的な限定的用法から言うと、関係詞節は前方の主節、即ち主要構造物に対して従属節、即ち「付加的構造物」と言うことになります。

しかし、関係詞の非限定的用法(継続的用法)から言うと、主節と「対等関係」に立つので、主節と同等の「等位節」ということになります。

もう一つの働きは、上記の構造式が示すように先行詞の「代名詞」として関係詞節を構成する一つの構成要素になるということです。すなわち、主語を構成すれば「関係詞の主格用法」ということになるし、目的語を構成すれば「関係詞の目的格用法」ということになります。

以上から、関係代名詞の構造的機能を一口に言うと、「接続の働きと関係詞節の構成要素になる働き」の2つの機能を持っているということになります。

この関係詞の構造的機能に対して、類似の従属接続詞、例えばthatやwhenとの違いを知ることが重要です。
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二、分析②(理論) 
上記の解説で示した「関係代名詞の2つの重要な機能(働き)」を実践に応用するとどうなるのか?という問題です。

課題文は、関係代名詞の「限定的用法」であることから、先ず関係詞節は主要構造物である主節に対して「付加的構造物」であり、従って効力的に「従属節」ということになります。

ということは、訳出に際して行うことは、まず第一に関係代名詞によって内包されている「先行詞の代名詞」の関係詞節における位置づけ(どの構成要素に当たるのか?)に配慮した上で、基本的に主節の「先行詞(antecedent)」に向かって「訳し上げる」ことになります。

次に、では、どの名詞が「先行詞」なのか?を決定しなければなりません。この決定法は、上記の解説や構造式で示したように、付加的構造物である関係詞節内において、関係代名詞がどの構造物である「文要素」に該当するかによって行われます。

この課題文では、その「先行詞」と関係詞との間に、2つの名詞fortunesとeventが挟まれているために、ほとんどすべての答案が、関係詞直前の名詞eventを先行詞と捉えて訳出していたのです。

しかも、その関係代名詞が関係詞節の中で「主語」という文要素であったために、先行詞の捉え方の間違いによって訳出が「nexus法則(主述関係)」に反してしまったのです。これは訳出法として決定的な間違いです。

それでは、先行詞と関係詞の間にある特に副詞語句について、「訳し上げる」際の如何なるタイミングで訳出すればいいのか?ということが大きな問題となります。

それは、すべての場合に当てはまるものではありませんが、そのタイミングは「関係詞節を訳出する直前」が原則です。要するに、関係詞の直前にある副詞語句は、関係詞節を訳出する直前に訳出するとうまくいくのです。なぜなら、そうすることによって「先行詞と関係詞の結合が明確になる」からです。