「課題文」
Whoever set the schedule for the second night of the Democratic National Convention certainly did Barack Obama no favors. As the former president admitted when he took the stage on Tuesday night, “I am the only person stupid enough to speak after Michelle Obama.”

Not to say that the Democrats gathered in the United Center in Chicago were unappreciative of their onetime favorite son. Mr. Obama delivered the kind of rousing yes-we-can speech that 20 years ago vaulted him from obscurity toward the White House. But following Mrs. Obama? He has demonstrated better judgment.

The his-and-hers marquee convention speeches by the 44th president of the United States and the former first lady fired up the partisan crowd. Speaking back-to-back over the course of an hour, the Obamas reminded Democrats of a past era of hope and change while electrifying a convention after a ceremonial roll call nominated Vice President Kamala Harris for president and Gov. Tim Walz of Minnesota for vice president.

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「訳例」
民主党全国大会における二日目の夜のスケジュールを誰が立てたにせよ、確かにバラク・オバマに何の配慮も払わなかった。というのは、火曜日の夜元大統領が登壇した時、彼は「ミシェル・オバマの次に演説するほど愚かな人間は私ぐらいなものだ」と認めたからだ。

シカゴのユナイテッド・センターに集まった民主党員は、かつてのお気に入りの息子に感謝の気持ちが失せていたというわけではない。オバマ氏は、20年前に無名の状態からホワイトハウスへ大躍進させたあの心を奮い立たせる「 yes-we-can 演説」を行った。だが、なぜオバマ夫人の後なのか?彼は賢明な判断力を示したのだ。

米国の第44代大統領とその元大統領夫人両名による党大会きっての看板演説は、熱烈な民主党支持者を熱狂させた。オバマ夫妻は、1時間にわたる立て続けの演説によって、カマラ・ハリス副大統領を大統領候補に、ミネソタ州知事のティム・ウォルツ氏を副大統領候補に指名するロール・コールの後、大会を大いに盛り上げながら民主党支持者に過去の希望と変革の時代を思い起こさせた。

一、分析法①(概説)
第1段落:Whoever set the schedule for the second night of the Democratic National
     Convention certainly did Barack Obama no favors.

□ Whoever set the schedule for~ did Barack Obama no favors

構造式(1):whoever V1+O1 V2+O2 (合成関係代名詞)

              ⇒ anyone who V1+O1 V2+O2(S+V+O:単文)
                       
        構造式(2):whoever V1, S+V2(合成関係代名詞の接続詞転用)

             ⇒ no matter who V1, S+V2(複文)

              ⇒ no matter = even if(譲歩の従属接続詞)

今回のテーマは、「合成関係代名詞whoeverの用法」についてです。

前半では今回の課題を巡るポイントを構造的に(構造式・展開式で)示し、そして後半では、その構造式・展開式の捉え方及び訳出法を明らかにします。

構造式(1)は、展開式で示したように合成関係詞whoeverが先行詞anyoneを内包するという構造的機能を持った用法です。その用法を知るためには構造式で示しているように、2つの節があるにもかかわらず(具体的には2つの動詞がある)、主語が1しかない事実から分かるのです。

従って、この課題文を示した構造式(1)は、第3文型の単文ということになります。

ところが、構造式(2)で示したように、この合成関係代名詞には構造式(1)に類似した構造の異なった用法があるのです。

この用法は見ての通り、2つの節が存在した構造になっており、これらの節を合成関係詞whoeverの合成部分everが「従属接続詞(譲歩)」の働きをしていることになります。

構造式(1)と(2)の見分け方について、上記のように「2つの節と接続詞の存在」を基準に述べましたが、もう一つの見分け方として、合成関係詞の合成部分everが「従属接続詞(譲歩)」の働きをする場合には、構造式(2)で示したように、一般的に2つの節の間に従属節と主節を区別するための「カンマ記号」があるのです。
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二、分析法②(原理)
合成関係詞であればそれが代名詞であれ形容詞であれ、さらには副詞であれ、上記で示したように2つの用法、即ち「先行詞を内包する用法」と「従属接続詞(譲歩)の用法」の何れであるかを構造分析しなければなりません。

この課題文は合成関係代名詞であり、しかも先行詞anyoneを内包する用法であることから、その訳出法を明らかにし、その後で「従属接続詞(譲歩)の用法」の訳出法を説明します。

関係詞whoeverを見て、それが先行詞anyoneを内包する用法なのかそうではないのかを考慮することなく、仮に内包するにしてもanyoneの訳語も、またwhoeverの訳語も「誰か、誰でも、どんな人でも」というものであり、しかも譲歩的意味合いも含まれていることから、「用法と訳語の一致」を無視する傾向があることは否めません。

構造式(1)は、先行詞anyoneこそが前文の主語であるから、その主語に対する本動詞V2を確定しなければなりません。そうであれば、関係詞whoeverのwhoの働きは関係詞節内の従動詞V1を先行詞anyoneに繋ぐ「接続語(~であるところの)」の役割ということになります。

従って、直訳すれば「V1する(ところの)誰であっても(どんな人も)」という訳出になります。もっとも、日本語の表現法は、英文表現ほど科学的ではないために、デリケートな表現にはなります。

一方、構造式(2)は合成部分everの働きが、構造式で示したように「no matter = even if」という譲歩の接続詞であるために、関係詞whoそのものには「接続語」としての働きではなく「従属節の主語」の働きをしていることになります。

従って、直訳すれば「たとえ誰が~しても」という訳出になるのです。

両者の用法の違いによって、厳密な日本語への訳出は斯くも異なるのです。しかし、上記したように日本語の非科学性から、現実的に通用する日本語表現と英語表現から予想される日本語表現が異なることになるのは言うまでもありません。