第80話:関係代名詞whatと間接疑問詞whatの区別、他動詞と目的語that-cl
「課題文」
When the career staff of the National Security Council popped onto a video call at 11:30 on Wednesday morning, a sense of dread had already settled in.
They knew exactly what President Trump thought of the council: that it was the core of the deep state, whose employees, almost all drawn from the State and Defense Departments or other agencies, had turned against him in his first term.
So it was no surprise when the word dropped. In a terse meeting that lasted just minutes — no questions, please — they were told to pack up and go home. Stay off your email and await further instructions, they were told, and some of you will be invited to apply for your old positions.
By a few minutes after noon, the National Security Council workers, who deal with crises around the world, were drifting out of their offices on a lunch break from which many would not return.
「訳例」
水曜日の午前11時30分、国家安全保障会議(NSC)の上級スタッフがテレビ通話に出た時には、すでに彼らには恐怖心が消えていた。
彼らは、トランプ大統領がNSCをどのように考えているかについて正確に分かっていた。要するに、同会議は闇の政府(deep state)の中核であり、その職員のほとんど全員が国務省や国防省、その他の国家機関から引き抜かれたもので、トランプ大統領の1期目の在任中彼に反旗を翻したということだ。
だから、見出しの言葉を耳にした時には驚き一つなかった。「質問は受け付けない」という数分ばかりの素気ない会議の中で、荷物をまとめて帰宅するように告げられた。メールを控えて、追加の指示を待ように。そうすれば、元の役職へ復帰せよと誘われる者もいるだろうと告げられた。
正午を少し過ぎた頃までには、世界中の危機に対処しているNSCの職員たちは、その多くが食後に戻って来ることもないランチタイムに合わせて、職場からゾロゾロと出て行った。
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一、 分析法①(概説)
第2段落:They knew exactly what President Trump thought of the council: that it was
the core of the deep state, : that it was the core of the deep state, ~
今回のテーマは、「関係代名詞whatと間接疑問詞whatの区別、他動詞と目的語that-cl」についてです。
□ They knew exactly what President Trump thought of the council ~
構造式:S1+V1 what S2+V2(関係代名詞か間接疑問詞か)
展開式1:S1+V1 the thing(s) which S2+V2 (関係代名詞whatの展開式)
展開式2:S1+V1 that S2+V2+what (間接疑問詞whatの展開式)
□ S+V ~ : that it was the core of the deep state,~
構造式:S1+V1 that S2+V2(that-clと前節との関係)
上記した2つの課題文は、相互に関連した問題を含んでいるので取り上げました。
上の課題文は、文中でのwhatの用法が関係代名詞なのか、それとも間接疑問詞なのかについて問うている問題です。
そして、下の課題文は、コロン記号直後にある接続詞thatはどのような働きをしているのかという問題です。この下の問題は、上の問題を解く一つのカギとなているということです。
さて、上の課題文は2つの展開式から分かるように、同一の構造式に対して2つの分析法があるということです。ということは、2つの異なった訳出法があるということでもあるのです。
そのいずれであるかを証明しているのが、下の課題文ということになります。要するに、下の課題文の構造式を見るとわかるように、上の展開式2が示している構造式と同一の構造式だからです。
しかしながら、英文は常にこのように2つの課題文のような構造の表現法を用いているわけではありません。ですから、上の課題文の構造式だけで、展開式1であるか、それとも展開式2であるかを決定しなければなりません。
その区別の判断基準は何か? そして、その訳出法は何かについて、次の解説で明らかにしましょう。
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二、分析法②(原理)
一般的に、whatが疑問代名詞であるか、それとも間接疑問詞であるかについては、主語と述語の位置関係を見ればいずれであるかの決定は可能です。しかし、それが関係代名詞か、それとも間接疑問詞かということになると、構造が同一であるために簡単に処理できません。
実際的に、皆さんの答案が簡単ではないことを明確に示しているのです。
では、その判断基準は何かですが、それについてはすでに「英日翻訳コンテスト(第12話)」と「英日翻訳コンテスト(第58話)」で取り上げていますので参照してください。
ここでは、少し突っ込んで解説します。まず、whatが「関係代名詞」であれば、上記の展開式1になり、その訳出は「V2である(ところの)もの」となりますが、反対に「間接疑問詞」であれば、上記の展開式2になり、その訳出は疑問の訳語が現れ、そして従属接続詞thatの訳語が現れる「何をV2するか(ということ)」、あるいはwhatが主語である場合には、「何がV2するか(したか)(ということ)」ということになります。
このように、関係代名詞か間接疑問詞かでその訳出は異なってくるのです。
従って、この訳出で分かることは、whatが間接疑問詞であれば、2つの基準で確認できるということです。1つは、whatが主語であれ、目的語であれ、さらには補語であれ、「動詞V2を中心としたnexus法則」に適合するか否かということです。
もう1つは、主節の本動詞V1が「that-cl」を目的語にとる他動詞であるかということです。つまり、「that-cl」を目的語にとるかどうかということは、その他動詞が目的語を「名詞相当語句」のみならず「名詞節」をとる構造的機能を持っているかどうかということになります。
「節cl形式」を目的語にとる他動詞は、その構造的機能として「説明文形式の目的語」をとるものであり、その種類は限定され、類型化することができます(ここでは取り上げません)。
以上から、動詞「V1と、さらにV2」をみれば、「nexus法則」によりいずれであるかを即決できるのです。ですから、下の課題文の従属接続詞thatの存在を見て決定する必要はないということです。
最後に、きわめて大雑把な確率で言うと、文中での「what節-cl」の大半は、「間接疑問詞」であるということです。