第82話:begin~byに関わる動詞の構造的機能(主要構造物の副詞語句化)
「課題文」
President Trump began his first cabinet meeting of his second term this morning by announcing that Volodymyr Zelensky, the Ukrainian leader, would visit Washington later this week to finalize a deal to give the U.S. a share of his country’s mineral revenues. However, Trump insisted that he would not provide security guarantees in return — rebuffing Zelensky’s central demand.
A draft of the minerals agreement obtained by The Times included new language that stated that the U.S. “supports Ukraine’s effort to obtain security guarantees needed to establish lasting peace.” But, Trump said: “I’m not going to provide security guarantees beyond very much,” adding that “we’re going to have Europe do that.”
Trump’s comments were just one portion of a wide-ranging meeting in which he sought to frame his first month of his term as a sweeping success. He also praised Elon Musk, who declared at the meeting that “America will go bankrupt” without his team’s aggressive efforts to reduce the size of the federal government.
「訳例」
トランプ大統領は今朝、就任2期目の最初の閣僚会議を開くに当たって、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がウクライナ国内の鉱物資源権益の一部を米国に与える取引を取りまとめるため訪米すると述べた。しかしながら、トランプ氏はその見返りとして安全保障を提供するつもりはないと強調した。これは、ゼレンスキー氏の重要な要求を突っぱねたということだ。
タイムズ紙が入手した鉱物資源協定の草案には、米国は「ウクライナが永続的な平和の確立に必要とされる安全保障を獲得するための取り組みを支援する」と明記した新たな文言が含まれていた。にもかかわらず、トランプ氏は次のように述べた。「安全保障を過分に提供するつもりはない。」そして、「その安全保障は欧州に担ってもらうつもりだ。」と付け加えた。
トランプ氏のこれらの発言は、就任後の最初の1カ月を成功裡に終えようとする閣議における多岐にわたる議題の一部に過ぎなかった。また、トランプ氏はイーロン・マスク氏を持ち上げることもした。というのは、マスク氏が連邦政府の規模を縮小する自らのチームの積極的な取り組みがなかったら、「米国は破産する」と会議で言明したことによる。
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一、分析①(概説)
第1段落:President Trump began his first cabinet meeting of his second term this morning by announcing that Volodymyr Zelensky would visit Washington later this week ~
今回のテーマは、「begin~byに関わる動詞の構造的機能(主要構造物の副詞語句化)」についてです。
□ Trump began his first cabinet meeting by announcing that ~
構造式:S+ begin +O by V-ing that-cl(begin~by表現における動詞の働き)
展開式1:adv-phr(begin+O), S+V +that-cl (動詞の副詞語句化)
展開式2:He says that S+V
⇒ adv-phr(he says), S+V(動詞の構造(frame)決定機能)
上記した課題文は、動詞の「構造的機能」における「第二の機能」について取り上げました。
構造式が示しているのは、他動詞beginの構造的機能によって構成された単文です。つまり、他動詞beginが目的語をとり、直後に前置詞byによる副詞語句によって他動詞beginに接続するというものです。
それを「構造物」の概念でいうと、他動詞beginによる第二文型を「主要構造物」と呼び、そして前置詞byによる語句を「付加的構造物」と呼び、その付加的構造物が主要構造物を形成する本動詞に接続しているということです。これが動詞の「第一の構造的機能」です。
展開式1は、上記の構造式を訳出するにあたって他動詞beginに接続する前置詞by語句が付加的構造物の場合、他動詞beginの構造的機能によって形成された主要構造物が「副詞語句化」することを示しているのです。これが動詞の「第二の構造的機能」です。
要するに、「構造物」の概念でいうと、訳出する際に「主要構造物」と「付加的構造物」の扱いが逆転することを示しているのです。
そして、展開式2は、展開式1を別例で示すために他動詞sayの構造的機能による「主要構造物の副詞語句化」を取り上げたものです。さらに他の例としては、付加的構造物が「to不定詞語句」の場合も当てはまりますが、言うまでもなくこの構造的な逆転現象がすべての付加的構造物に当てはまるものではありません。
後半の解説では、なぜこのような構造的な逆転現象が生まれるのか、その根拠は何か、そしてその具体的な訳出法は何かについて取り上げます。
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二、分析②(理論)
この問題の中心となるのは、動詞の「構造的機能の二面性」からくるので、理論的枠組みからいうと「述語システム」になるのですが、動詞が前方の主要構造物の一要素であるから、「文頭システム」になるとも言えます。以前、「文頭システム」としてとらえたことがありますが、む述語述語システム」として捉えた方がいいように思います。
一般論として、英文表現における「主要構造物」と「付加的構造物」の役割は、主要構造物は
文意の核心部分を表す働きを持ち、付加的構造物は主要構造物の全部ないしは一部の背景(具体的な説明や理由)を述べる働きをしています。そのために相互の間に「主従関係」という効力(力)関係が生まれます。
ところが、その役割が逆転するというのが今回のテーマです。
この役割の逆転は、構造物間の「効力(力)関係」の逆転ということでもあり、この処理を間違えると原文筆者の真の文意が伝わらないことになります(「訳出法」の問題)。
この構造物の逆転現象のキーワードは、主要構造物の「本動詞」と付加的構造物の「従動詞や原形動詞」です。つまり、この現象は、これら「2つの動詞」が何らかの「接続語(5種類)」によって接続されているその関係から生まれる現象です。
勿論のこと、この現象は2つの動詞間における「何らかの関係」(nexus法則に基づく主従関係あるいは等位関係)を前提としているのです。
しかし、「構造物の逆転現象」は、単に2つの動詞の「相互関係」だけで説明できる問題では無論ありません。この現象を引き起こすためには、前段の解説で述べたように、「動詞自体が内包する構造的機能の二面性」によるということです。
つまり、動詞の構造的機能には、基本的な機能として①「主要構造物+付加的構造物」を形成する場合もあれば、そうではなく②「付加的構造物+主要構造物」を形成する場合もある。これが英文全体のframeを決定する動詞の構造的機能の核心なのです(frame決定機能)。
詳細は避けますが、上記した動詞の2つ目の働きによって、今回のタイトルである「主要構造物の副詞語句化」という現象が生じたということになります。訳出は模範訳例で確認してください。