「課題文」
President Donald Trump’s abrupt decision to reverse course on his sweeping tariff plan by announcing a three-month pause revealed his threshold for political pain: One week.

“They were getting yippy,” Trump said, explaining the rising criticism raining down on the White House over the last week. “They were getting a little bit yippy, a little afraid.”

Even for a president famous for his policy bobs and weaves, Wednesday’s announcement he was pausing his long-touted reciprocal tariffs for three months amounted to a stunning reversal of a plan he had appeared only a day earlier to be fully behind and came as his own trade representative was testifying on Capitol Hill to the benefits of the tariffs, seemingly catching him unaware of the pause.

Days of pressure from fellow Republicans, business executives and even his close friends hadn’t appeared to move Trump, who insisted last week: “MY POLICIES WILL NEVER CHANGE.”

音声解説はこちらからどうぞ。
                    
「訳例」
トランプ大統領が、唐突にも大規模な関税計画を3ヶ月間停止すると言って方針を大転換したことで、彼の政治的痛みに対する我慢の限界がわずか1週間だということを世間に晒した。

彼は、「世間の者たちは少々不安を感じ騒ぎ立てている」と言って、この1週間にわたりホワイトハウスに浴びせかけている批判の高まりを説明した。

コロコロと方向性の定まらない大統領でさえも、長期にわたる押し売り同然の相互関税を3ヶ月間停止するとした水曜日の発表は、ほんの昨日までは強く支持しているように思われた計画がどんでん返しとなり、しかもその発表はトランプ政権の通商代表が連邦議会で関税の正当性を証言している最中になされたものであり、一見して当の通商代表は相互関税の停止を知らなかったようだ。

トランプ大統領は、仲間の共和党支持者や企業経営者、さらには親しい友人からの度重なる相互関税撤回の圧力にも動じるようには思えなかった。というのは、先週彼は「私の政策は絶対に変わらない」と断言したからだ。

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一、分析①(概説)
今回の解説は、第1段落の ‘President Donald Trump’s abrupt decision to ~ revealed his threshold for political pain: One week.と、第4段落の ‘Days of pressure from fellow Republicans ~, who insisted last week: “MY POLICIES WILL NEVER CHANGE.”’です。

    解説のポイントは、「コロン(colon)記号の働き」です。
           
前半の解説では、この課題における「コロン記号の働き」について、構造的視点から取り上げ、そして後半の解説では、その訳出法について取り上げます。

    □ President Donald Trump’s abrupt decision to ~ revealed his threshold
for political pain: One week.

      構造式:S+ revealed +O : O’(O’はOの具体的事例 = 強調)

      展開式1:V+O:O’(O is O’)
展開式2:V+O such as O’
 
     □ Days of pressure from fellow Republicans ~, who insisted last week:
“MY POLICIES WILL NEVER CHANGE.”

      構造式:(S) insisted : O(Oはinsistの目的語 = セリフの引用)

      展開式:V : O(S+V+O)
 
記号論の処理法については、拙著「実践から学ぶ英語翻訳法」において、また 当講座の「でんしゃ理論 第33話」のテーマである「記号とnexus法則」において、何度か取り上げました。

まず、コロン記号の基本的な用法は、「例証記号」と呼ばれているように、前出の名詞語句を後述によって「具体的事例」で示すための表現法です。これが原則的な用法です。

この用法に基づいて、「前出の語句の説明」の働きに拡大したり、また「強調」と呼ばれる働きを持ったりするのです。

その使用法の一つが上記で取り上げた構造式なのです。

上の構造式は、展開式でも示したように、前出の目的語Oについて、言葉を変えて具体的に例示というか、具体的に説明しているのです。そのことから、目的語Oが別表現によって「強調」されるという効果が生じているのです。

ここで注目すべきことは、コロン記号の前後にある構造物の相互関係です。上記の2つの構造式が示しているのは、一方は語句であり、他方は節であるけれども、いずれの構造物も前出の構造式を形成する構成要素であるということです。

特に後者の節による表現法は、ある意味で「it~thatの強調構文」と同じ働きをしているということができます。前者の語句による表現法は、前置詞such asと類似の訳出処理をすることができますが、コロン記号の存在によって「強調表現」の働きを併せ持っているということです。

要するに、「コロン記号」の用法は、「強調的働き」に拡大して、さらに「emダッシュ記号」(前出の内容について、別視点からの主張や説明)の働きにまで及ぶともいえるのです。

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二、分析②(理論) 
上記の構造論から分かるように、「コロン(colon)記号」の用法は、「例証記号」としての働きから拡大して、「強調表現」そして「emダッシュ記号」(前出の内容について、別視点からの主張や説明)の働きにまで及ぶものであることから、その訳出法は一様に片付けることができません。

つまり、「例えば、O’などのようなO」(例証記号による訳出)と訳出するだけでOKというわけにはいかないということです。「emダッシュ記号」のような働きをする場合には、「セミコロン記号」の働きと同じように、何らかの繋ぎの「接続詞的表現法」が必要になるということです。

記号論の処理は、あくまでも記号の持つ「基本的な働き」に基づいて英文表現法を「構造論的・機能論的」に分析して行う必要があるのです。

上の構造式の展開式2で示したように、前置詞such asを用いても「コロン(colon)記号」の訳出と同じになるのではないかと思われるかもしれません。確かに、日本語の表現法は「前置用法(先付方式)」であるために類似の処理が可能になると思われますが、その処理法によって同時に「強調」の意味合いを生み出す必要があるのです。

もっとも、日本語の表現法はこのような構造的表現法の違いを生み出すことによって、文意を子細に区別することはできません。訳者の力に左右されるということです。