「課題文」
Protests have spread beyond Los Angeles, with demonstrations against ICE and the Trump administration popping up in major cities across the United States.

In both LA and Spokane, Washington, city authorities imposed curfews on Wednesday night. In many other cities, police departments worked to disperse protesters long after night fell.

LA Mayor Karen Bass said the curfew could be in effect for several days. Things could pick up on Saturday, when there are “No Kings” protests and anti-Trump rallies scheduled across the country. The protests, organized by the nonviolent 50501 movement, come on the same day as President Donald Trump’s planned military parade through Washington, DC.

音声解説はこちらからご覧ください。
                    
「訳例」
ICE(移民税関捜査局)とトランプ政権に対するデモが、全米各地の主要都市で頻発するという状況に伴い、それらの抗議行動がロサンゼルス以外の地へ拡大した。

ロサンゼルスとワシントン州のスポケーンでは、市当局が水曜日の夜、夜間外出禁止令を出した。他の多くの都市では、夜が更けるまで警察がデモ参加者たちを追い散らすことに当たった。

ロサンゼルスのカレン・バス市長は、夜間外出禁止令を数日間取り消すつもりはないと述べた。土曜日には事態は一変するだろう。というのは、その日は「王様はいらない(No Kings)」という抗議行動と反トランプ集会が全米各地で計画されているからだ。非暴力の50501運動が組織したそれらの抗議行動は、トランプ大統領がワシントンD.C.で計画している軍事パレードと同じ日に行われる。
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一、分析①(概説)
第1段落の ‘Protests have spread beyond Los Angeles, with demonstrations against ICE and the Trump administration popping up in major cities across the United States.’

  解説のポイントは、「前置詞withと分詞構文の付帯状況」です。
           
前半の解説では、この課題について構造的視点から取り上げ、そして後半の解説では、その訳出法について取り上げます。

    □ 構造式:S+V, with O+pred(pred:前置詞語句、形容詞、副詞、分詞、to-inf)
  ⇒展開式:with O+pred ⇒ V+O+C (O+C⇒nexus法則)

     □ 類 例:S+V1, V2-ing ~ (分詞構文による付帯状況or等位接続詞の省略)
⇒ 展開式1:S~, V2-ing ⇒ S+V(nexus法則、付帯状況)      
⇒ 展開式2:S+V1,and(but) V2 ~ (等位接続詞の省略)

今回の「前置詞withの付帯状況」については、すでにこの講座(斉木英検第60回 でんしゃ理論第7回)に取り上げていますのでご覧ください。

この度は、「前置詞withの付帯状況」を中心にして、「分詞構文による付帯状況」にも少し触れたいと思います。

「前置詞withの付帯状況」の構造は、上記の構造式の通りであり、その構造の特徴は目的語の直後に「predicative表現がある」ということです。その「predicative表現」を具体的に示しておきました(pred:前置詞語句、形容詞、副詞、分詞、to-inf)。

その場合、前置詞with以下の語句は、withの構造的機能によって本動詞Vに接続するために「副詞語句の性質の付加的構造物」ということになります。

また、目的語と直後の「predicative表現」との関係は、前置詞withが実質的に「不完全他動詞」であるかのような働きを持つために「nexus法則」が成り立つのです(be動詞省略のケースもある)。

次に、上記の類例で示したように、「分詞構文による付帯状況」の表現法がありますが、この表現法は展開式で示したように、構造的視点からみると「等位接続詞の省略」と同じであり、いずれかの区別の問題が新たに生じます。

分詞構文の「等位接続詞の省略」の問題は、すでにこの講座の中で取り上げていますが(本動詞と現在分詞形の原形動詞との相互関係)、前置詞with語句と分詞構文による「付帯状況」の関係については、初めて取り上げます。概略は以下の通りです。

根本的な違いは、with語句の場合には前置詞withの構造的機能によって本動詞に接続する表現法であり、主語との関係はない。また、上記したようにwith語句内において、実質的な主述関係(nexus法則)が成立するけれども、この語句(実質上は節)は本動詞に接続して本動詞の動作や状況を追加的に表現することによって主語の置かれた背後や周辺状況を表現するものです。

一方、分詞構文の場合は主語には実質的に2つの動詞(本動詞と現在分詞の原形動詞)があって、その一つの動詞である分詞構文(主語との間にnexus法則が成立する)が本動詞の動作の状況説明の役割を担っている(2つの動詞間に主従関係はあるが、分詞構文の構造的機能については未確定のため研究の余地がある)ということです。
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二、分析②(理論) 
前置詞withの方法にせよ分詞構文の方法にせよ、「付帯状況」は動詞に付帯する(厳密に言うと、上記したように分詞構文の場合の付帯状況については、構造的機能が未確定です)ことによって主語の「背後や周辺状況」を具体的に表現する方法です。

その表現法を訳出においてどのように処理するのかということですが、構造論・機能論の観点から上記の構造式を分析してみると、前置詞with以下の語句は上記したように、本動詞に接続する「副詞語句」として状況説明をすることになります。

つまり、本動詞を中心とした文要素である「主要構造物」に対して「付加的構造物」ということになります。ということは、両者の構造物間には「主従関係」という効力関係が生じることから、前置詞with以下の語句の日本語への訳出は、「前置用法(先付け方式)」の原則に従って、本動詞よりも先に訳出することになります。

もっとも、斉木英検第60回(でんしゃ理論第7回)の中で述べたように、本動詞とwith語句相互の関係を日本語で「前置用法(先付け方式)」の原則に従って100%の確率で訳出できるかどうかについては日本語表現法の特徴から若干問題があります。

仮に「後置用法(後付け方式)」の原則に従って訳出する場合があるとしても、本動詞と現在分詞との間の「主従関係」を崩すことはできません。

また、「分詞構文による付帯状況」の場合、その語句が文中にある場合と文頭にある場合にかかわらず、日本語へ訳出するときには日本語の「前置用法(先付け方式)」の原則に従って、本動詞よりも先に訳出することが原則です。