「課題文」
Ukrainian President Volodymyr Zelenskiy said on Wednesday he had held a “substantive” conversation with U.S. President Donald Trump’s Ukraine envoy, Keith Kellogg, in Rome shortly after Trump pledged to send more defensive weapons to Kyiv.

“We discussed weapons supplies and strengthening air defense. Given the increase in Russian attacks, this remains one of our top priorities,” Zelenskiy wrote on the X social media platform. “We also covered the purchase of American weapons, joint defense manufacturing, and localization efforts in Ukraine,” he added.

Zelenskiy said he and Kellogg had discussed at length proposals to slap tougher sanctions on Moscow, as the Ukrainian leader has long advocated as the best means to persuade the Kremlin to abide by a ceasefire and move toward peace.

音声解説はこちらからどうぞ。

「訳例」
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は水曜日、トランプ米大統領が追加的な防衛用兵器をウクライナに送ると約束した直後に、ローマでトランプ大統領のウクライナ特使キース・ケロッグ氏と「実質的な」会談を行ったと、述べた。

「我々は、兵器の供給と防空の強化について議論した。ロシアによる攻撃の増加を考えると、これは依然として我々にとって最優先事項の一つである」と、ゼレンスキー氏はソーシャルメディア・プラットフォームXに書いた。「同時に、我々は米国製兵器の購入、防衛用兵器の共同生産、そしてウクライナでの現地生産についても話し合った」と、ゼレンスキー氏は付け加えた。

ゼレンスキー氏は、同氏とケロッグ氏は長い時間をかけてロシアにさらに厳しい制裁を科すための幾つかの提案を話し合った、と述べた。もっとも、それらの提案は、ウクライナの指導者がこれまでロシア政府を説得して停戦を遵守させ、そして和平に向かわせるための最善の方法として主張してきたことではあるが。
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一、分析①(概説)
第3段落の ‘Zelenskiy said he and Kellogg had discussed~, as the Ukrainian leader has advocated as the best means to persuade the Kremlin to abide by a ceasefire and move toward peace.’

解説のポイントは、「asは関係詞(遊離関係詞)なのか接続詞なのか」です。

前半の解説では、この課題について構造的視点から取り上げ、そして後半の解説では、その訳出法について取り上げます。

□ 構造式1:S1+V1(vt)+O1, as(O2)S2+V2(vt)(as:関係詞か接続詞か)
⇒展開式:as(O2) S2+V2(vt) ⇒ though S2+V2+O2(as:関係詞の目的格用法)

□ 類 例1:S+V, as is often the case(遊離関係詞)
□ 類 例2:as (it) is natural, S+V (遊離関係詞)
□ 類 例3:Everything had happened exactly as expected(様態の接続詞)

□ 構造式2:S+V, which-cl(関係詞の継続的用法)
⇒展開式:which-cl ⇒ and(but, for, though) S+V(譲歩のthough)

今回の「関係代名詞の継続的用法」は、構造的機能として関係詞なのか、それとも従属接続詞なのか、そしてその意味は「譲歩なのか様態なのか(様態の場合は、従属接続詞となる)」など、関係詞と接続詞の境界線上の問題です。

後の解説で述べますが、私は関係詞か接続詞かの判断は、先ず「構造的・機能的側面」から、そして次に「2つの動詞相互の実質的な意味論的関係」から行います。

そこで、「構造的・機能的側面」から分析します。

上記の構造式とその展開式から見て取れることは、接続語asの直前にカンマ記号があり、以下のas節の他動詞V2(vt)には「目的語」がないことから、この接続語asは関係詞の継続的用法で、内包する先行詞はその「目的語」であるということになります。

一般的に「主語」がない場合、直前の接続語を「関係詞代名詞」であると即断することはできません。というのは、nexus法則の働きで「主語の省略」が行われることから「接続詞」という場合もありうるからです。

次に、「2つの動詞相互の実質的な意味論的関係」から分析すると、「接続詞(従属接続詞)」であれば、主節の本動詞と従動詞との間には「主従関係」があり、そして「関係詞の継続的用法」の場合には「対等関係」がある、言い換えるといずれの場合も2つの動詞間に「一体感」があるのです。

ところが、構造的・機能的側面から課題の「as節」の2つの動詞間にはその「一体感」がなく両者の間には「遊離関係」が働いているということです。

これを示しているのが、類例1~2です。

なぜas節にこのような問題が生じたのかといえば、それは「関係詞の継続的用法」における意味論の多様性なのです。拙著「実践から学ぶ~」で取り上げているのですが、上記の構造式2で示しておきましたが、「関係詞の継続的用法」の場合には代名詞の中に「譲歩のthough」の意味が含まれていることによるものです。
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二、分析②(理論)
この課題の「接続語as」の用法は、上記の解説で示したように「構造的・機能的分析と意味論的分析」から、あくまでも基本は「関係詞の継続的用法」であって、「従属接続詞」ではないということです。

そうであれば、上記の構造式2で示した「等位接続詞thoughを内包する関係代名詞の継続的用法」ということになります。訳出として、「~、もっともS2はV2であるが(けれども)。」となります。

しかし、thoughは「従属接続詞」の構造的機能も同時に内包していることから、仮にこの関係詞節が主節と「対等関係」に立っているとはいえ、上記の訳出で示したように日本語での印象はある意味で「主従関係」にあるように思われるかもしれません。

決定的な判断基準は、上記の「構造的・機能的側面」からではなく「2つの動詞相互の実質的な意味論的関係」から判断することになります。

従って訳出する場合には、「関係詞の継続的用法」に従って「左から右へ訳し下げる」ことになり、その訳語表現は「譲歩的表現(もっとも~であるが、~であるけれども)」を用いることになります

特に、このas節が文頭に来る場合には、主節よりも「先に」訳し始めなければならないことから、「従属接続詞」ではないかという印象が残ります。しかし、これが関係代名詞asの「遊離関係詞の用法」の特徴だということになります。

この本質を抑えないと、英文の文意の論理性を掴ことはできないということになります。