「課題文」
A NATO summit designed to please President Trump ended on Wednesday with his European allies approving an ambitious spending goal to meet the threat of a militarizing Russia, and clinching a long-elusive public commitment from the mercurial American leader for the alliance’s collective defense.

Since his first term, Mr. Trump has been pressing for the allies to spend more on their own defense. On Wednesday, after a one-day meeting in the Netherlands, they agreed to raise their spending on the military to 5 percent of their national income by 2035.

That amount consists of 3.5 percent on traditional military needs like troops, weapons, shells and missiles, up sharply from the current target of 2 percent. It also include another 1.5 percent on “militarily adjacent” projects like improved roads and bridges, better emergency health care, better cybersecurity and civic resilience.

音声解説はこちらからご覧ください。
                    
「訳例」
トランプ大統領を喜ばせようと企画されたNATO首脳会議は水曜日、欧州の同盟諸国が軍事活動を強めるロシアの脅威に対抗するため野心的な軍事支出の目標を承認し、そしてなかなかまとまらなかった同盟国間の集団防衛に対する結束を気まぐれなアメリカのリーダーから取り付けて終了した。

トランプ氏は、1期目の大統領就任以来同盟諸国に対して自国の防衛費を増額するよう強く求めてきた。水曜日、オランダでの1日だけの首脳会議後、同盟諸国は2035年までに軍事費の支出を国民所得の5%まで引き上げることに合意した。

その軍事費への支出5%は、3.5%を兵士、武器、そして砲弾やミサイルなど軍事上の必需品に当てられる。これは、2%という現在の目標値から大幅な増額だ。また、残りの1.5%には道路や橋の改修、緊急医療体制の改善、そしてサイバーセキュリティや市民生活の復興力の強化など「軍事関連」のプロジェクトが含まれる。
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一、分析①(概説)
第1段落: A NATO summit ~ ended with his European allies approving an ambitious spending goal ~, and clinching a long-elusive public commitment ~.
   解説のポイントは、「前置詞withの付帯状況とNexus法則」です。
前半の解説では、この課題について構造的視点から取り上げ、そして後半の解説では、その訳出法について取り上げます。
    □ 構造式:S+V, with O+pred(pred(叙述語): 現在分詞)
  ⇒展開式1:with O+pred ⇒ V+O+C (前置詞with⇒不完全他動詞)
      ⇒展開式2:O+pred ⇒ O+C (S+V nexus法則)
今回の「前置詞withの付帯状況とNexus法則」については、前回の英日英検第101回(付帯状況の解説)に加えて、さらに「Nexus法則」の観点から解説したいと思います。

この問題は、恐らく日本の「学校文法」では片付かない何か、例えば英文構造の柱である「nexus法則」の働きが不明瞭で曖昧な異文化言語の日本人には根本的に理解できないというのがあると思います。

先ず、前回の英日英検第101回(付帯状況の解説)の構造分析法の一部を示しておきます。
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「前置詞withの付帯状況」の構造は、上記の構造式の通りであり、その構造の特徴は目的語の直後に「predicative表現がある」ということです。その「predicative表現」を具体的に示しておきました(pred:前置詞語句、形容詞、副詞、分詞、to-inf)。

その場合、前置詞with以下の語句は、withの構造的機能によって本動詞Vに接続するために「副詞語句の性質の付加的構造物」ということになります。

また、目的語と直後の「predicative表現」との関係は、前置詞withが実質的に「不完全他動詞」であるかのような働きを持つために「nexus法則」が成り立つのです(be動詞省略のケースもある)。
                     英日英検第101回(でんしゃ理論89話)
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上記の説明は、展開式1・2を簡潔に結果的に説明したものですが、なぜそのような結論に至るのかは、すでに述べているように英文の基本構造が「nexus法則」によってできているからです。

「付帯状況」の前置詞withの構造的機能によって目的語Oを抱えるのは、他動詞にも同様の構造的機能があるからであり、目的語Oの直後に「predicative表現」の補語があるのは、不完全他動詞にも同様の構造的機能があるからです(もっとも、付帯状況withがとる補語の種類と形態は、不完全他動詞の場合よりも多い)。

しかし、展開式1のように目的格補語に名詞や形容詞ではなく、多様な「predicative表現」の補語が来るのは、「付帯状況」の前置詞withの特徴的な構造的機能ということができます。

また、目的語と補語との間に、展開式2のように「Nexus法則」が成り立つのは、不完全他動詞と同様の機能を持つ「付帯状況」の前置詞withの特徴です。

その場合、次の解説で述べますが訳出における目的語Oを「意味上の主語(意味上の主語の理論)」と呼びます。これもすべて英文構造の基本が「Nexus法則」に基づいている証左なのです。

注)2つの文要素がある場合(A+B)、わかりやすく言えば、Bが動詞ないしは動詞の変化形の場合、それに対して必ず「主語」が存在する、これが「Nexus法則」の原理です。従って、直前のAが名詞であれば、Bの「主語」になる可能性があるということです。勿論この場合、本動詞の主語がBの「主語」になる場合もあるが、それはBの表現法やBの直前の表現法を見れば判断できることです(具体的には、後日の機会に述べます)。
二、分析②(理論) 
先ず、前回の英日英検第101回(付帯状況の解説)の基本的な訳出法を示しておきます。
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前置詞withの方法にせよ分詞構文の方法にせよ、「付帯状況」は動詞に付帯する(厳密に言うと、上記したように分詞構文の場合の付帯状況については、構造的機能が未確定です)ことによって主語の「背後や周辺状況」を具体的に表現する方法です。その表現法を訳出においてどのように処理するのかということですが、構造論・機能論の観点から上記の構造式を分析してみると、前置詞with以下の語句は上記したように、本動詞に接続する「副詞語句」として状況説明をすることになります。

つまり、本動詞を中心とした文要素である「主要構造物」に対して「付加的構造物」ということになります。ということは、両者の構造物間には「主従関係」という効力関係が生じることから、前置詞with以下の語句の日本語への訳出は、「前置用法(先付け方式)」の原則に従って、本動詞よりも先に訳出することになります。
                   英日英検第101回(でんしゃ理論89話)
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この翻訳コンテストでは、「付帯状況」とは何か、「付帯状況」の前置詞withは訳出にどのような働きをしているのか、そして最後に「分詞構文による付帯状況」との関係に若干触れておきます。

先ず、「付帯状況」とは何かですが、上記したように「動詞に付帯することによって主語の背後や周辺状況を具体的に表現する方法」です。要するに、主語の状況について動詞で表現できない周辺部分の状況を詳細に表現するための用法だということです。

従って、訳出においては動詞に接続する「副詞語句」ということになります。また、その表現法の特徴は、前置詞with語句の付帯状況の場合は無論のこと、分詞構文による場合であっても語句ないしは節形式が用いられているということです。

また、仮説ですが、前置詞withと分詞構文という接続語間には、「付帯状況」の用法においてwithに不完全他動詞の機能もあることから、「Nexus法則」に基づく機能的共通性があるのかもしれません。

少々難しいのですが、上記の説明を構造式で示しておきます。
        □ S1+V1, Vt-ing that S2+V2
⇒ with O+C(with = Vt-ing / O+C=S2+V2)