「課題文」
President Volodymyr Zelensky of Ukraine urged the United Nations on Wednesday to prevent Russia from freezing the war as it is now, saying that the Kremlin “still wants even more land — more land, which is insane, and is seizing it day by day while wanting to destroy its neighbor.”
Those nations pushing to end the conflict were ignoring the wishes of the Ukrainian people, he said in an address to the General Assembly, and were encouraging President Vladimir V. Putin’s expansionary aims.
“It not only ignores the interests and the suffering of the Ukrainians, who are affected by the war the most,” he said, “It not only ignores reality, but it also gives Putin the political space to continue the war.
「訳例」
ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は水曜日、国連に対してロシア政府は「未だにさらに多くの土地、狂気じみているが多くの領土を獲得しようとし、実際ロシアの隣国を破壊したいという思いで日々領土を強奪している」と述べて、ロシアに現状のまま戦争を凍結させないように強く要求した。
ゼレンスキー氏は、国連総会での演説の中で、戦争の終結を迫っている国々は、ウクライナ国民の願いを無視したものであり、ウラジミ-ル・プーチン大統領の領土拡大の野心を助長していると述べた。
「紛争の終結を迫ることは、戦争によって最も強く影響を受けているウクライナ人の利益と苦しみを無視するだけではなく、また現実の状況を無視するだけではなく、それによってプーチンが戦争を継続するための政治的余地を手にすることになる」と、彼は述べた。
一、 分析法①(概説)
第1段落:Volodymyr Zelensky urged the United Nations to prevent Russia from freezing the war, saying that the Kremlin “ wants more land, which is insane, and is seizing it~ ”
今回のテーマは、「分詞構文と接続詞の構造的役割」についてです。
□ Zelensky urged the United Nations to prevent~, saying that the Kremlin
wants more land, which is insane, and is seizing it~
構造式(1):urged~ to prevent~, saying that~(分詞構文の構造的機能)
⇒ S+V, V-ing that-cl(分詞構文による主要な役割)
構造式(2):the Kremlin wants more land, which is insane, and is
seizing it~ (等位接続詞の構造的機能)
⇒ S+V1, which is insane, and V2+O(関係詞と接続詞の優劣関係)
前半では今回の課題を巡るポイントを構造的に(構造式・展開式で)示し、そして後半では、その構造式・展開式の捉え方及び訳出法を明らかにします。
構造式(1)は、展開式で示したように文中の「分詞構文」の用法についてです。その用法については「等位接続詞andの省略」と「付帯状況」の2つがあるのですが、そのいずれであるかは基本的に前方の本動詞との関係によって決まります。もっとも、使用されている動詞とその用法を見れば定型化されているのですぐに分かるものなのですが。
一言で言うと、本動詞との間に「行為の経過」や「手段(行為)⇒結果」の関係にあるのか、それとも分詞構文の原形動詞が本動詞を取り巻く「状態などの背景」の役割を果たしているのかを基準とします。
もっとも、ここでは上記のような「2つの動詞相互」の関係ではなく、「分詞構文」の構造的機能を「センテンス全体の構造に及ぼす影響」という側面から取り上げました。具体的には、以下の解説をご覧ください。
構造式(2)は、展開式で示したように「関係詞と接続詞の優劣関係」についてです。
この関係詞の用法は、「関係詞の継続的(非制限的)用法」であることから、直後の等位接続詞と同様の構造的機能を持っていることになります。そうなると、英文構造から見ると、一旦関係詞の直前で大きく一時切断し、その後でさらに等位接続詞andの直前で一時切断するのか、それとも何らかの理由によっていずれかの接続語が優先する「優先劣後の関係」 が成立するのかという問題が出てきます。
二、分析法②(原理)
「分詞構文」も接続語の一つであり、もちろん「接続詞」も同じ接続語の範疇に入るのですが、それらが一文の中に複合的に使用された場合、それぞれの構造的機能が個別に分かっても、文章構造全体の接続関係が分からないと、訳出法としてどこから訳し始めるべきかも分かりません。
要するに、「木を見て森を見ず」状態になり、その結果訳出があらぬ方向に行ってしまうことにもなります。そのことから、英文構造の「接続関係」の処理は、正に翻訳のための前提となるのです(翻訳作業の第一段階)。
さて、上記の構造式(1)の展開式で示したように、文中での「分詞構文」の構造的働きは、その構造的機能が「接続詞省略」であれ「付帯状況」であれ、一文を大きく前後に2分する働きがあるのです。
「接続詞省略」の場合は、一文を2つの「対等関係」の節にするものであり、「付帯状況」の場合は2つの動詞(本動詞と分詞の原形動詞)の間に「主従関係」を作り出す働きがあり、結果として本動詞が構成する節を「主要構造物」と呼び、そして分詞の原形動詞が構成する構造物を「付加的構造物」と呼んでいるのです。
この課題問題は、後者の用法(付帯状況)であるために、先付方式の日本語へ訳出する場合は、付帯状況の「付加的構造物」から訳出する(訳し上げる)ことになります。
そのような構造分析を前提として、上記の構造式(2)の「接続関係」の処理をすることになります。要するに、構造式(2)の「接続関係」は構造分析において「付帯状況」との間に「劣後の関係」が生じるということです。
そこで、よく観察してもらいたいのですが、2つの接続語which(関係代名詞)とand(等位接続詞)がありますが、後者のandは直後に「動詞(進行形)」があるために、前方の動詞(本動詞)と接続していることが分かります。要するに、1つの主語に対して前方の本動詞と「対等関係」に立つ2つの動詞がある一文(単文)であることが分かります。
そうであれば、接続詞andの直前にある関係詞whichの「継続的用法」によって構成された関係詞節は、本動詞と「対等関係」にあると捉えるのではなく、むしろ「従たる関係の挿入語句(譲歩)」と捉えた方が妥当だということになります。
実際的に、このwhich節の内容からみて関係詞whichの先行詞は、前節にある一つの名詞相当語句ではなく「前節そのものである」ということです。結果として、訳出する場合には前節を修飾する「副詞語句」として扱うことができるのです。