第75話:接続詞whileの扱い方
「課題文」
Vice President Kamala Harris offered an uplifting, positive charge to her supporters as she conceded the 2024 presidential election, acknowledging the stinging loss while committing to a peaceful transfer of power and vowing to “fight” in a much different way than a defeated presidential candidate promised four years ago.
“Earlier today, I spoke with President-elect (Donald) Trump and congratulated him on his victory. I also told him that we will help him and his team with their transition and that we will engage in a peaceful transfer of power,” she said in remarks at Howard University, her alma mater, in Washington, DC.
“A fundamental principle of American democracy is that when we lose an election, we accept the results. At the same time, in our nation, we owe loyalty not to a president or a party, but to the Constitution of the United States, and loyalty to our conscience and to our God,” she said.
「訳例」
カマラ・ハリス副大統領は、2024年の大統領選挙の敗北にあたって、手痛い敗北を認めながらも、平和的な政権移行を誓約し、また4年前に敗北した大統領候補者が約束したのとは全く異なる方法で「闘争する」ことを誓いつつ、支持者に対して高揚感のある積極的な責務を語った。
「今朝早く、私は次期大統領(ドナルド)と話し、選挙での勝利を祝福した。また、我々はトランプと彼のチームの政権移行を支援すること、そしてその政権移行が平和的に行われるように協力することを彼に伝えた。」と、彼女はワシントンD.C.にある母校ハワード大学での発言の中で述べた。
「アメリカ合衆国の民主主義の基本原則は、選挙に敗北すればその結果を快く受け入れるということだ。同時に、我が国においては、大統領や政党に対してではなく、合衆国憲法に対して、そして自らの良心と神に対して忠誠を尽くす義務がある。」と、ハリス氏は述べた。
一、 分析法①(概説)
今回の解説は、第1段落の ‘Kamala Harris offered an uplifting, positive charge to her supporters ~, acknowledging the stinging loss while committing to a peaceful transfer of power and vowing to“fight”~’です。
この解説のポイントは、「接続詞whileの扱い方」です。
前半の解説では、この課題における「接続詞whileの扱い方」について、構造的視点から取り上げ、そして後半の解説では、その訳出法について取り上げます。
□ Kamala Harris offered a charge to her supporters~, acknowledging the
stinging loss while committing to a peaceful transfer of power and vowing
to“fight”~
(構造式)~, acknowledging the stinging loss while committing to a
peaceful transfer of power and vowing to“fight~
⇒ S+V, V1-ing+O1 while V2-ing~ and V3-ing~
⇒ S+V, V1-ing+O1, and V2-ing~ and V3-ing~
⇒ S1+V1 while S2+V2
上記の構造式において、上の構造式は英文構造をそのままの形で単純化したものであり、中の構造式は接続詞whileの「構造的機能」を分析したものであり、下の構造式は接続詞whileの一般的な用法を構造式化したものです。
つまり、下の構造式のwhileの用法は、上と中の構造式を理解する上で基本となる用法であることを理解する必要があります。
この構造式のwhileの構造的機能は「従属接続詞」であり、従って従属節の従動詞V2を抱えて、主節の本動詞V1に接続するという働きです。
しかし、この課題文での接続詞whileの構造的機能は、①下の構造式のように従属節の主語S2が存在しないということ、そして②直前の語句表現が、while以下と同じ「現在分詞」になっており、しかも主節である「S+V」に対する従属節ではなく、その「付加的構造物」になっていることから、下の構造式とは異なった構造の表現法であるということになります。
構造論の視点から、上の構造式のV1-ingを含むそれ以下の語句は、S+Vを「主要構造物」とする「付加的構造物」であるということになります。
ということは、接続詞whileの構造的機能はそれ前後の「現在分詞語句」を対等の語句として接続している「等位接続詞」ということになります。それを具体的に分析したのが中の構造式です。
*接続詞whileに関する「等位接続詞」としての用法、構造式で言うと「S1+V1, whileS2+v2」という「カンマ記号」を用いた用法の解説は、下記の解説をご覧ください。
二、分析法②(原理)
上記の構造式で示したように、この課題文の構造は上の構造式と中の構造式に該当すると思われます。つまり、接続詞whileの構造的機能は「従属接続詞」ではなく、「等位接続詞」であるということです。
そこで、「2つの節」を接続する等位接続詞whileの一般的な構造は、以下の通りです。
S1+V1, while S2+V2.
しかし、課題文の接続詞whileは、「2つの節」を繋ぐのではなく、「2つの語句」を繋いでいることから、接続詞whileの直前に「カンマ記号」は必要ありません。
それでは、その等位接続詞whileがどのような意味を含有しているのかを示したのが中の構造式なのです。すなわち、「while = , and(~と同時に、さらに、その上、そして)」というものです。
その判定は、2つの語句の間に「形式の同一性」と「行為や状態の類似性」の関係があるかどうかということです。課題文の場合は、選挙の敗北という共通の事実から生じる行為であることから、この基準に合致しているのです。
最後に、3つの現在分詞と本動詞offerの関係です。それぞれの現在分詞が、本動詞offerの「背後の状況」を示していることが分かるでしょうか?要するに、これらの現在分詞は、本動詞offerの「付帯状況」を表す、「付加的構造物」であるということです。