「課題文」
Ukraine fired a number of British Storm Shadow cruise missiles into Russia’s Kursk region on Wednesday, a day after firing American long-range missiles into the country, according to Pentagon and Ukrainian officials.
Moscow has said that the use of Western weapons to strike deeper into Russian territory is a major escalation, and for months that stance had kept the United States and Britain from allowing Kyiv to use the American long-range missiles or the Storm Shadows.
But President Biden last week authorized the first use of the American Army Tactical Missile Systems, known as ATACMS, deep inside Russia. American officials say the pivot was in response to Moscow’s surprise decision to bring North Korean troops into the fight. Prime Minister Keir Starmer of Britain quickly followed suit, authorizing Ukraine to use the Storm Shadows, officials said.
「訳例」
米国防総省及びウクライナ政府当局によると、ウクライナは水曜日、ロシアのクルスク州に対してイギリス製の長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」を何発も撃ち込んだ。これは、アメリカ製の長距離ミサイルをロシア領内に数発撃ち込んだ翌日のことだ。
ロシア政府は、西側製の兵器を使用してロシア領内深くを攻撃することは、重大なエスカレーションに当たると述べた。このロシア政府の姿勢によって、アメリカとイギリスは数カ月間ウクライナ政府がアメリカ製の長距離ミサイルやストームシャドーの使用を許可しなかった。
しかし、バイデン大統領は先週、アメリカの陸軍戦略ミサイルシステム、通称ATACMUSをロシア領内の深部へ使用することを初めて正式に認めた。この方針転換は、北朝鮮軍を戦闘に参戦させるというロシア政府による驚愕の決定に対応したものであり、英国のキア・スターマー首相もすぐさまそれに呼応して、ウクライナによるストームシャドーの使用を正式に認めたと、米国政府の高官は述べた。
一、 分析法①(概説)
第2段落:Moscow has said that the use of Western weapons to strike deeper into Russian territory is a major escalation, and for months that stance had kept the United States and Britain from allowing Kyiv ~
今回のテーマは、「節と節を繋ぐ等位接続詞andの用法」についてです。
□ Moscow has said that the use of Western weapons ~ is a major escalation, and for
months that stance had kept ~
構造式:S1+has said that S2+is+C, and S3+had kept+O(S3節の前節との関係)
展開式(1): S1+has said that-cl, and(so)S3+had kept+O(2つの動詞の変化形)
展開式(2): S1+has said that-cl①, and that-cl②(sayの2つの目的語の形態)
展開式(3): that stance(物) had kept+O+ from allowing(物主語と他動詞)
構造式で指摘しているように、等位接続詞andの構造的機能の全体を捉える前に、まずS3節が前節のどの構造物と対等関係に立つのかという問題です。
多くの答案が、この点を深く考慮することなく適当に捉えているために、等位接続詞andの前後の構造物を「A and B(S3+V3)」で表すと、「A」をS1節にしたり(これは結果的に正しい捉え方ですか)、S2節にしたりと様々でした。
そのうえ、仮に「A」を正しくS1節にしたとしても、①等位接続詞andの直前にある「カンマ記号」の働きと、それに加えて②S1節の動詞(has said)とS3節の動詞(had kept)の「意味上の相互関係」に意識が向いていないために、等位接続詞andの構造的機能(結果)を正確に捉えることができないことになっているのです。
展開式(1)について:構造式を具体的に展開すると、この展開式(1)になります。その理由は、上記したように①カンマ記号の存在と、②2つの動詞の「意味上の相互関係」(結果)になるからです。
さらに言うと、この等位接続詞andの直後に副詞語句for monthsがあり、また展開式(3)のように、S3節が物主構文になっていることも考慮に入れることができます。
一般的に、「結果」の接続詞は、上記したように「and so」ないしは「so」ですが、このように「and」も使用されます。
展開式(2)について:「A」がS2節に当たるとした場合には、S3節の表現形態はこのようになります。それは、等位接続詞andの構造的機能の一つである「形式の同一性」が根拠となります。
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二、分析法②(原理)
この等位接続詞andの構造的機能を知るためには、2つの構造物間、即ち「A and B」における「形式の同一性」と「性質の同一性」だけで判別することはできません。
これらの同一性は、何が「A」であり, 何が「B」であるのかの決定基準に過ぎず、それら2つの構造物の「意味上の相互関係」まで決定することはできません。
この「意味上の相互関係」の決定基準になるのが、上記したように①等位接続詞andの直前にある「カンマ記号」の存在であり、②S1節の動詞(has said)とS3節の動詞(had kept)の時制を含む「意味上の相互関係」であり、さらには③この等位接続詞andの直後に「副詞語句」for monthsがあり、また展開式(3)のようにS3節が物主構文になっているからです。
どういうことかというと、物主構文の訳出法は「無生物主語の理論」と言って、名詞の物主語を訳出に際して「副詞語句」として処理するからです。
つまり、この③については展開式(3)で示したように、等位接続詞andの明確な意味を決定する「副詞so」に該当すると考えられるのです。
従って、この等位接続詞andの用法は、「結果(それで、従って、すると)」に該当することになります。