「課題文」
A peaceful, pro-democracy uprising against Syrian President Bashar al-Assad in 2011 turned into a full-scale civil war that has devastated the country and drawn in regional and world powers.
More than half a million people have been killed and 12 million have been forced to flee their homes, about five million of whom are refugees or asylum seekers abroad.
Prior to the rebels’ offensive, the war had felt as if it were effectively over after Assad’s government regained control of cities with the help of Russia, Iran and Iranian-backed militias. However, large parts of the country remain out of the government’s direct control.
These include northern and eastern areas controlled by a Kurdish-led alliance of armed groups supported by the United States.
「訳例」
2011年、シリアのバッシャール・アサド大統領に対する平和的で民主化を求める抗議行動が、国を破壊し尽くし、周辺国や世界の列強国を巻き込んだ全面的な内戦へと変貌した。
これまでに50万人以上が殺害され、1200万人が家を追われ、しかも1200万人のうち約500万人が難民あるいは国外への亡命希望者だ。
反乱軍が攻撃に出るまでは、この内戦もアサド政権がロシアやイラン、そしてイラン支援の民兵組織の力を借りて都市部の支配権を取り返した後であり、事実上終戦になるかと思われた。しかしながら、国土の大半は依然としてアサド政権の直接的支配が及んではいない。
これらの地域には、米国の支援を受けたクルド人主導の武装勢力が支配する北部及び東部地域が含まれる。
一、 分析① (概説)
今回の解説は、第4段落の ‘These include northern and eastern areas controlled by a Kurdish-led alliance of armed groups supported by the United States.’です。
この解説のポイントは、「過去分詞形とnexus法則」です。
前半の解説では、この課題における「過去分詞形とnexus法則」について、構造的視点から取り上げ、そして後半の解説では、その訳出法について取り上げます。
□ These include northern and eastern areas controlled by a Kurdish-led alliance of armed groups supported by the United States.
構造式: These include+O1 controlled by+O2 supported by+O3
(指示代名詞の主語/主要構造物+付加的構造物)
展開式(1): these include +O1 = adv-conj, O1 be+included~
⇒ adv-conj, O1 be+V-ed(指示代名詞と副詞接続詞)
展開式(2): S+V+O1 V1-ed by+O2 V2-ed by+O3(主要構造物+付加的構造物)
⇒ adv-conj, O1 be+V-ed [which O2 (V2-ed by+O3 ) +V1]
上記の2つの展開式は、構造式の2つのポイントを示したものです。
展開式(1) は、指示代名詞theseが主語として働いていることから、日本語の処理としてthus 、so、thereforeなどの副詞接続詞と同じように、主語を前文との関係を繋ぐ「副詞接続語句」として扱い、従って目的語を主語とする「受動態」の表現法を示しています。
主語theseは性質上「物主語」であることから、必然的に「物主構文」に該当するというものではありません。「物主構文」に該当するためには、「物主語に対する述語(他動詞)」が 原則的に「生物主語に対する述語(他動詞)」、例えば「make, giveなど」 でなければなりません。
話は少し逸れますが、欧米の民事法における「契約上の主体、即ち当事者」の概念として、「人だけではなく組織や団体」も法人格の主体になりうるのです。その場合、人を「自然人」と呼び、組織や団体(会社など)を「法人」と呼んでいるのです。
要するに、欧米人の捉え方は、日本文化とは異なり「人も物も」同価値的に捉えており、従って言語において主語(生物)と目的語(物)との入れ替えの表現である「能動態⇔受動態」は単なる機械的処理であり、意味に変化はないということです。
従って、この課題の構造式では、その他動詞が物主語であれ生物主語であれ、いずれの主語も取ることができる「include」であるために、いわゆる「物主構文」ではないということになります。
結果として、目的語(物)を主語とした「受動態」の表現になるのです。
ちょっと、難しかったでしょうか?
展開式(2)は、少々ややこしいのですが、目的語O1に対して、それ以下の語句が「過去分詞形(形容詞の構造的機能)」によって修飾する構造を示しています。
その構造を日本語への訳出において機械的に処理すると、正に「訳し上げ(右から左へ)」の訳出法になり、英文を逆に読むことになります。
その結果どうなるかというと、付加的構造物は主要構造物が「大前提」であることから、日本語として扱うと付加的構造物の「構造論も意味論も」共に日本語としても英語としても相互に矛盾が生じることになるのです。
それを修正したのが、展開式(2)で示した表現法なのです(新日本語の訳出法)。
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二、分析②(理論)
今回の解説は、少しばかり力が入りすぎて、専門的になってしまいました。テーマが「接続関係とnexus法則」という言語学における一般的なテーマから外れたものになってしまったということもあると思います。
ですから、このテーマの「訳出法」については、以下において分かり易く解説しようと思います。
上記の解説から、「主要構造物」の訳出法が「受動態」となったために、態の変換によって目的語O1が主語に移動することになりました。それに伴って、目的語O1に接続する過去分詞V1-edも、また直前の名詞O2に接続する過去分詞V2-edなどの「付加的構造物」も、英文構造の分析法に従うと、英文の文末の1語(O3)から「訳し上げる」ことを余儀なくされることになります。
その訳出法が英文構造に対する正当な訳出法であるとすれば、上記したように①英文構造における「付加的構造物は、主要構造物を大前提としている」という法則に反する上に、それが原因となって②訳出した日本語が、構造上も意味論上も日本語らしからぬ表現法になってしまうのです。実際的に、「右から左に」訳し上げ、最終的に目的語O1を主語とした「受動態」の訳出は意味不明なものであり、とても正しい日本語表現とは言えないでしょう。
その修正法が、展開式(2)で示した「nexus」法則による方法なのです。
O1 be+V-ed [which O2 (V2-ed by+O3 ) +V1](新日本語の訳出法)
上記の展開式を少し解説すると、「主要構造物」と「付加的構造物」を、英語表現では一本化(+)しているけれど、日本語の表現法ではその「主要構造物」と「付加的構造物」を一時切断して2分し、そして「付加的構造物」についてnexus法則に従って「主述表現」に組み替える(一時切断して2つの節を作る。これは、英文の内容的真意を若干歪めることになるのは事実)。
そうすることによって、後半部にも明確な「主述表現」が生まれ、結果的に「左から右へ」訳し下げることが可能になる、併せて日本語としても通用できるということです。
この方法は、英文の文意の核心部分に完全に一致するものではないにしても、限りなく英文の内容的真意に近い意味が生まれ、そして同時に日本語として通用する表現法になるのです。私の呼ぶ「新日本語」の表現法なのですね。