「課題文」
In the days after Syria’s government fell and President Bashar al-Assad fled to Moscow, Syrians celebrated the sudden end of a dynastic regime that had kept them in fear and poverty for five decades.
In Damascus, the capital, and Aleppo, they pulled down statues, tore up portraits of the Assad family and ransacked the presidential palace, denouncing Mr. al-Assad’s opulent lifestyle in a country where most people live below the poverty line.
The government’s fall, on Dec. 8, was the end of a brutal civil war that began in 2011, when Mr. al-Assad cracked down on peaceful pro-democracy protests during the Arab Spring. An estimated 618,000 people have died, and some 12 million — more than half the country’s population — were displaced. Tens of thousands more disappeared into a prison system that was notorious for its abuses.
「訳例」
シリア政府が崩壊し、バシャール・アサド大統領がモスクワに逃亡してから数日間、シリア国民は、半世紀にわたり恐怖と貧困状態に陥れてきたアサド世襲体制が忽然として崩壊したことを祝った。
首都ダマスカスとアレッポでは、人々は銅像を引き倒し、アサド一家の肖像画を引き裂き、そして大統領官邸を略奪で荒らし回るなどをして、シリア国民の大半が極貧状態で暮らす中でのアサドの豪勢な生活ぶりを激しく非難した。
12月8日に起きたシリア政府の崩壊は、2011年に始まった無慈悲極まりない内戦の終結でもあった。その内戦時、アサドは「アラブの春」と呼ばれる暴力のない民主化運動を弾圧した。推定61万8000人が殺され、国の人口の半数以上の約1,200万人が住むところを奪われた。そして、数万人以上の人々が虐待で悪名高い刑務所に消えた。
一、 分析① (概説)
第3段落:The government’s fall, on Dec. 8, was the end of a brutal civil war that began in 2011, when Mr. al-Assad cracked down on peaceful pro-democracy protests ~
今回のテーマは、「関係副詞の継続的(非制限的)用法」についてです。
□ The government’s fall was the end of a brutal civil war that began in 2011,
when Mr. al-Assad cracked down on ~
構造式:S1+V1+C, when S2+V2(関係副詞whenの継続的用法)
展開式:S1+V1+C, and then S2+V2 (等位接続詞andの内包)
関係代名詞whichの継続的用法については、このシリーズの「英語英日検定第75回」(でんしゃ理論第37話)で取り上げました。
今回の関係副詞whenの継続的用法についても、関係代名詞と基本的にその内容の説明は同じです。
要するに、関係副詞の場合も代名詞と同様に、先行詞である前節の名詞ないしは名詞相当語句が、関係詞節において副詞ないしは副詞相当語句の役割を果たすことになるのです。
ただし、その場合、関係代名詞であればその代名詞が、関係詞節において主語や目的語、あるいは名詞補語として多様な働きの構造物に変化するけれども、関係副詞の場合は、先行詞である前節の名詞ないしは名詞相当語句が、関係詞節において動詞を修飾する「副詞ないしは副詞相当語句」に変化するにすぎません。
それを表しているのが、上記の展開式なのです。
また、関係副詞の制限的用法(限定的用法)には、4種類ないしは5種類(when、where、why、how、そしてthat)があるのですが、継続的用法(非制限的用法)には2種類(when、where)しかありません。
この「継続的用法」の関係詞には、上記の展開式が示すように「等位接続詞and」が内包されているのですが、そうであれば上記の構造式と展開式の間に訳出上同一の価値(効力)があるのかについては次の解説の中で取り上げます。
また、関係詞において「制限的用法なのか、それとも継続的用法なのか」は、挿入語句・節を除いて関係詞の直前に「カンマ記号」の有無が識別基準となります。
二、分析②(理論)
さて、上記の構造式と展開式が価値的に(効力的に)全く同一であれば、訳出においても前節と関係詞節を同価値的に(対等関係として)訳出することができることになります。
ということは、前節の動詞と関係詞節の動詞が効力的に「同価値」ということになるのですが、厳密にとらえると実質的に「同価値」ではありません。というのは、関係詞によって先行詞である前節の一部の構造物(名詞ないしは名詞相当語句)を具体的に説明する表現法が関係詞の本来の構造的機能であることから、前節の構造物の一部の説明を前節全体の説明として捉えることはできないからです(もっとも、前文全体を先行詞とする関係代名詞whichの場合を除きます)。
要するに、効力関係において前節と関係詞節の間には「主従関係」はあるわけで、その微妙な効力関係の違いを英語では構造式で表すことができるけれども、日本語では表現できません。
従って、訳出において、上記の構造式と展開式は「価値的に同一」として扱う以外にはないのです。
しかし、ここで注意すべきことは、関係副詞の継続的用法において前節と関係詞節の効力
関係は、上記のように「価値的に同一」とみなすことができるけれども、そうであるからと言って展開式の等位接続詞andの構造的機能において、前節の動詞と関係詞節の動詞が両者の間において相互に「論理的関係(2つの動詞間の論理的一体性)」に立つかというと、そうではありません。
つまり、「論理的関係」には立たないということです。なぜなら、上記したように、関係詞節の動詞は、単に前節の構造物の一部を具体的に説明しているにすぎないからです。