「課題文」
It has been obvious for months that politics and the law were going to bump into one another in the 2024 campaign, given the double role that former President Donald J. Trump has been playing as a criminal defendant and leading Republican candidate.

But in a way that few expected, that awkward bump has turned into a head-on collision. It now seems clear that the courts — especially the Supreme Court — could dramatically shape the contours of the election.

The nine justices have already agreed to review the scope of an obstruction statute central to the federal indictment accusing Mr. Trump of plotting to overturn the 2020 election. And they could soon become entangled in both his efforts to dismiss those charges with sweeping claims of executive immunity and in a bid to rid himself of a gag order restricting his attacks on Jack Smith, the special counsel in charge of the case.

音声解説はこちらからどうぞ。

「訳例」
トランプ前大統領が刑事被告人であると同時に、共和党の最有力候補でもあるという一人二役を演じていることから、2024年の大統領選で政治と法律がぶつかり合うことは、何カ月も前から分かっていた。

しかし、ほとんどの人が予想だにしなかった形で、この厄介な対立が正面衝突に発展した。今や裁判所、とりわけ連邦最高裁が選挙の行方を劇的に決定することになるのは明らかなようだ。

9人の裁判官がすでに、トランプ氏を2020年の選挙結果の転覆を図った罪で裁く連邦裁判所に提出された起訴状の中核部分である司法妨害法の適用範囲を再審査することに同意している。従って、彼ら判事たちは、やがてトランプによる広範な大統領免責特権を主張して公訴から逃れようとする企てと、本件を担当する特別検察官ジャック・スミスに対する攻撃を制限するかん口令から逃れるための画策に巻き込まれることになるだろう。
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一、分析①(概説)
第1段落:It has been obvious for months that politics and the law were going to bump into one another in the 2024 campaign, given the double role that former President Donald J. Trump~.

今回のテーマは、「主要構造物と付加的構造物の扱い方」についてです。

前半では今回の課題を巡る「主要構造物と付加的構造物」とは何かについて構造的に示し、そして後半では、その訳出法を明らかにします。

(1)It has been obvious that S+V, given +O
            ⇒(1) It is +C that S+V, prep +O
⇒(2) that S+V, prep +O is +C
⇒(3) S = C
⇒(4) adv(Cの文全体修飾副詞化), S+V, prep +O
⇒(5) S+V, prep +O

上記のように5つの展開式を示したのは、構造式(1)に示した’given +O’という「付加的構造物」の語句に対する「主要構造物」を論理的に示したものです。

というのは、’given +O’という「付加的構造物」に対する主要構造物が、it節なのか、それともthat節なのかという決定が、この課題文には求められるからです。

そこで、結論を述べると、展開式(5)が示すように、付加的構造物である’given +O’が接続する主要構造物は展開式(1)が示す’S+V’だということなのです。

展開式(1)と(2)は形式主語itと真主語that-clを入れ替えたものであり、展開式(3)はbe動詞の「繋合詞」としての構造的機能によって成り立つ関数であり、その関数が成り立てば、形容詞補語Cは「副詞化」して文全体を修飾できることになる。

ということから、付加的構造物である’given +O’の対する主要構造物は、it節ではなくthat節ということになるのです。

そうであれば、その両者をどのように訳出するのかについては、後半の解説で明らかにしましょう。 
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二、分析②(理論) 
さて、「主要構造物と付加的構造物」の訳出法ですが、もしそれらの2つの構造物が「動詞」による構造物であると同時に、両者が「等位(対等)関係」にあれば、共に主要構造物であり、付加的構造物は存在しません。

例えば、文中の分詞構文で、しかも等位接続詞が省略された構文である場合、あるいは関係詞節が前節と等位(対等)関係にある関係詞の継続的用法(非制限的用法)の場合などです。

この課題文では、一方が「主述関係」によって構成されている「主要構造物」であり、他方が前置詞語句による「付加的構造物」であることが分かります。

要するに、この付加的構造物は主要構造物の述部(本動詞)に接続する副詞語句であることから、両者の間には主たる構造物と従たる構造物という明白な「主従関係」が発生しています。

この場合、両者を一時切断して訳出するとなると、その構造的機能である「主従関係」を壊さないように訳出するための高度なテクニックが求められます。

その意味で、この課題文において一時切断する場合には2つの構造物の構造的機能に配慮した方法でしなければならないということです。