「課題文」
Russia has intensified its online efforts to derail military funding for Ukraine in the United States and Europe, largely by using harder-to-trace technologies to amplify arguments for isolationism ahead of the U.S. elections, according to disinformation experts and intelligence assessments.

In recent days, intelligence agencies have warned that Russia has found better ways to hide its influence operations, and the Treasury Department issued sanctions last week against two Russian companies that it said supported the Kremlin’s campaign.

Russian operatives are laying the groundwork for what could be a stronger push to support candidates who oppose aiding Ukraine, or who call for pulling the United States back from NATO and other alliances, U.S. officials and independent researchers say.

音声解説はこちらからどうぞ。        

「訳例」
米国の偽情報専門家や情報機関の見解によると、ロシアは大統領選の前に、主に追跡困難な科学技術を用いてウクライナの孤立主義に向けた議論を活発化させ、それによって米国や欧州におけるウクライナ向け軍用資金を阻止しようとするサイバー活動を強化した。

最近のことであるが、米情報機関は、ロシアがインフルエンスオペレーション(影響力工作)を隠す巧妙な手法を見つけたと警告し、しかも財務省は先週、ロシア政府の工作活動を支援しているとしてロシアの企業2社に対して制裁を課した。

ロシアの工作員たちは、ウクライナ支援に反対する、あるいは米国をNATOや他の同盟国から引き離すことを要求する候補者たちを強力に支援するための土台作りに取り掛かっていると、米高官や独立系の研究者は述べた。
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一、分析①(概説)
□Russia has intensified its online efforts to derail military funding for~
□~, largely by using harder-to-trace technologies to amplify arguments for~

今回のテーマは、「to不定詞の形容詞的用法と副詞的用法」についてです。

前半では今回の課題を巡る「to不定詞の形容詞的用法と副詞的用法」を構造的に示し、そして後半では、その訳出法を明らかにします。

  □Russia has intensified its online efforts to derail military funding for~

its online efforts to derail military funding
⇒(1) effort to-inf (形容詞的用法)
            ⇒(2) effort of+O

□~, largely by using harder-to-trace technologies to amplify arguments for~

using harder-to-trace technologies to amplify
⇒use+O to-inf(副詞的用法)
           
上記のように、課題文の中の2つの「to不定詞」を示しました。上の「to不定詞」は形容詞的用法であり、下の不定詞は副詞的用法です。

この区別は、(1)不定詞そのものが持つ「構造的機能」と、(2)直前・直後の単語や語句が持つ「構造的機能」の両者の働きによって決定されます。

つまり、不定詞の「構造的機能」はそのものが一体をなして「名詞化」したり、「形容詞化」したり、あるいは「副詞化」したりする変幻自在の性質を持っているために、構造論的に言うと、「名詞や形容詞や副詞」が構成要素として用いられる構造物になるということです。

従って、文中の構成要素として果たして「名詞」として用いられているのか、それとも「形容詞」として用いられているのか、さらには「副詞」として用いられているのかの決定は、「不定詞」のみでは決定できません。

要するに、不定詞前後の単語・語句の「構造的機能」によって判断することになります。

即ち、上の事例でいうと、不定詞が自らの構造的機能によるのではなく「名詞effort」の構造的機能によって「形容詞的用法」となり、下の事例でいうと、「動詞use」の構造的機能によって「副詞的用法」になったのです。つまり、動詞useと「to不定詞」の動詞の原形との間には、「手段・結果の関係」が成り立つという動詞の構造的機能によって判断するのです。

その場合の訳出はどうなるかについて、後半の解説の中で明らかにしましょう。
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二、分析②(理論) 
上記で述べたように、不定詞は「toと動詞の原形」が「一体」をなして、「名詞」や「形容詞」や「副詞」として用いられるのです。

ということは、基本的に2語で構成される「toと動詞の原形」は、訳出においても「一体的」に訳出することになります。

しかし注意すべきは、不定詞が「主語(名詞的用法)」あるいは「補語(名詞的用法と形容詞的用法)」として用いられる場合にはその「一体化」がそのまま当てはまりますが、「形容詞的用法」の場合には直前の「名詞」の構造的機能によってその名詞に接続する場合があります。

その場合には、さらにその「名詞との一体化」が生まれ、訳出の質的変化が起きるのです。

そして、「副詞的用法」の場合には、形容詞的用法のように相手方の「動詞や形容詞」との「一体化」が生まれ、上記の動詞useの場合には不定詞との間に「手段・結果の関係」が生まれ、訳出に際しては「訳し下げる」ことになります。

また、相手方が形容詞の場合には不定詞との間に「結果・原因の関係」が生まれ、訳出に際しては「訳し上げる」ことになるのです。

そして、「to不定詞」の副詞的用法には、それ以外の文頭や文中にあって「独立用法(文修飾副詞)」などがあり、実に多様です。