「課題文」

President Biden said on Wednesday that weapons would begin to flow to Ukraine “within hours” as he signed a $95.3 billion package of aid to Ukraine, Israel and Taiwan, reaffirming U.S. support for Kyiv after months of congressional gridlock put the centerpiece of the White House’s foreign policy in jeopardy.

 

In remarks from the White House, Mr. Biden said the foreign aid package would strengthen national security. “It’s going to make the world safer,” he said. “And it continues America’s leadership in the world, and everyone knows it.”

 

The Senate voted overwhelmingly to approve the package on Tuesday night after increasingly divisive politics raised questions on Capitol Hill and among U.S. allies about whether the United States would continue to back Kyiv against Russia’s military assault.

 

音声解説はこちらからどうぞ

                    

「訳例」

バイデン大統領は水曜日、ウクライナとイスラエル及び台湾への総額953億ドルの支援法案に署名した際、武器の供与が「数時間以内に」ウクライナ向けに開始されると述べ、数か月にわたる議会の膠着状態によって米国政府の対外政策の根幹が危機に陥った末に、ようやく米国によるウクライナへの支援が再確認された。

 

バイデン大統領は、ホワイトハウスでの発言の中で、この対外支援の一括法案は米国の安全保障を強固なものにすると述べた。「この法案の成立によって世界は一層安全なものになる。また、この法案の成立によって米国は今後とも世界を指導する立場に立つことになる。それは誰にも分かることだ。」と、彼は述べた。

 

火曜日の夜、上院が圧倒的多数でこの一括法案を承認したが、それは政治的対立が激しさを増す中で、連邦議会と同盟諸国間に米国が果たしてロシアによる軍事侵攻に対抗してウクライナを支援する意思があるのかどうかの疑いが浮上した挙句のことだった。

                              ———————————————–

 

一、   分析①(概説)

「解説」

第1段落:President Biden said that weapons would begin to flow to Ukraine~ as he signed a $95.3 billion package of aid~, reaffirming U.S. support for~ after months of congressional gridlock put the centerpiece of~ in jeopardy.

 

今回のテーマは、「主要構造物と付加的構造物における語句・節の効力関係」についてです。

 

前半では今回の課題を巡るポイントを構造的に示し、そして後半では、その訳出法を明らかにします。

 

           □ weapons would begin to~ as he signed~

 

                    ⇒ S1+V1 as S2+V2 (主節と従属節の関係)

 

              □ President Biden said that weapons would begin to~ as he

                 signed~, reaffirming U.S. support for~

 

                    ⇒ said+O1, and reaffirmed+O2 (文中の分詞構文)

 

              □ months of~ gridlock put the centerpiece of~ in jeopardy

 

            ⇒ gridlock put+O(物主構文)

 

この長い文章は一文で構成されているために、主要構造物に対して多様な形で付加的構造物が使用されていることになります。

 

そこで、上記のようにその重要な3つの「接続部分」を取り出してみました。

 

1つ目は、従属接続詞asの用法です。asには多様な意味が含まれていますが、いずれにしてもその構造的機能は「従動詞V2を本動詞V1に繋ぐ」ことです。従って、2つの動詞間には「主従関係」が生まれます。

 

2つ目は、文中の分詞構文reaffirmingの用法です。この現在分詞の用法について度々「等位接続詞の省略」なのか、それとも「付帯状況」なのかの質問があります。その結論は、

2つの動詞間が「対等関係」にあるのか、それとも「主従関係」にあるのかが機能論的視点からの最終結論です。

 

3つ目は、物主語gridlockが使用された物主構文です。英語には生物主語と物主語の区別がなく合理的なnexus法則に従って構成された科学的な言語に対して、日本語はあくまでも生物主語の文化で、もっと言えば「主語のない」文化です。

 

そのために、多様な動詞を用いた英文の物主構文についての訳出には、上記の「生物主語」を原則とした訳出、もしくは「受動態」による訳出が用いられるのです。前者の訳出法を「無生物主語の理論」と呼んでいます。

 

それぞれの訳出はどうなるかについて、後半の解説の中で明らかにしましょう。

                               ———————————————–

 

二、分析②(理論) 

上記の3つの事例についてその訳出を説明する前に、訳出に当たって一つ重要な点を指摘しておきましょう。

 

英文が長くなると、当然のことながら語句・節間の「接続関係」が問題になってきます。受講生のほとんどの答案がこの「接続関係」に惑わされているのです。しかも、この接続関係についての体系的な指導は、学校文法の中には存在しません。

 

なぜなら、「接続関係」を体系的に捉えるためには、英文を構造論・機能論として、

さらに一歩突っ込んで言うと単語や語句を意味論的にではなく「構造的機能」として捉える必要があるからです。

 

この問題は「接続関係」だけの分野の問題かというと、英文の基本構造は「nexus法則(主述関係)」を前提としているために、その動詞である「本動詞の構造的機能」を無視していくら「接続関係」を論じても意味がないのです。非常に難しい問題なのですが・・・。

 

そうであれば、「本動詞」を含む主要構造物は一般的に文頭にある節ですから、訳出する場合に文頭から「訳し下げる」ことが、欧米人の思考に合致すると同時に、その思考に基づいた英文構造を読み解けば、その文意も読み取り易くなるというものです。

 

従って、英文を構成する構造物の扱い方については、あくまでも前方にある「主要構造物」に基づいて「付加的構造物」を処理するということになります。

 

さて訳出ですが、1つ目は「V2したときV1した」となります。2つ目は、「V1を述べてV2を再確認した」となります。3つ目は、「膠着状態によってOが危機的状況に晒された」となります。

 

この視点に立って、模範訳例で確認してください。