「課題文」
President Biden continues to confront deeper doubts among Democrats than former President Donald J. Trump faces among Republicans — even after Mr. Trump was convicted of 34 felony charges last month, according to a new poll by The New York Times and Siena College.

The national survey on the eve of the first presidential debate shows that voters have broad distaste for both candidates but that Mr. Trump has so far better consolidated the support of his own party. Only 72 percent of voters who said they cast a ballot for Mr. Biden four years ago say they approve of the job he is doing as president. And voters overall say they now trust Mr. Trump more on the issues that matter most to them.

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「訳例」
ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が行った直近の世論調査によると、バイデン大統領は、トランプ前大統領が共和党内で直面する不信感よりも依然深刻なものであることが分かった。しかも、先月トランプ氏が34件の重罪で有罪評決を受けた後であってもだ。

この全国調査は、第1回大統領選テレビ討論会の前日に実施されたものだが、これによると有権者たちは明らかに両候補者に対して不信感を抱いているが、これまでのところトランプ氏の方が自党内の支持を固めていることが分かる。また、4年前にバイデン氏に投票したという有権者の内で、今回バイデン氏の大統領としての仕事ぶりを認めているのは、わずか72パーセントに過ぎなかった。しかも、有権者全体では、自らに深く関わるような問題については現時点においてトランプ氏の方を信頼すると回答している。

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一、分析①(概説)
第2段落:Only 72 percent of voters who said they cast a ballot for Mr. Biden four years ago say they approve of the job he is doing as president.

□ Only 72 percent of voters~ say they approve of~

構造式:Only S1~ say (that) S2+V2
                (S+V+O:主語に強意の副詞)

(類例)Only+ prep-phr V+S.(前置詞語句の強調による倒置)

         展開式:It is only S1~ that say (that) S2+V2
(it~thatの強調構文)
  
今回のテーマは、「主語に強意の副詞onlyの表現法」についてです。

前半では今回の課題を巡るポイントを構造的に(構造式・展開式で)示し、そして後半では、その構造式・展開式の捉え方及び訳出法を明らかにします。

上記の英文表現には主部にも述部にも2つの従属節が用いられ、それに加えて本動詞によって構成される主節があり、その主節の文頭にある主語に「副詞only」が修飾しているという、構造的に見ると厄介ですが、下の構造式を見ると分かるように基本第3文型なのです。

つまり、上記の構造式は、基本第3文型の主語に「強意の副詞」onlyがついていると捉えることができます。

この主語の「強意」を強調構文として変形したのが、展開式のit~that強調構文です。これはit~that-cl構文によって被強調語を明確にする表現法であり、構造式と展開式の間に構造的には異なるけれども、意味論的には同じだということです。

(類例)で示した構造式は、「強意の副詞」onlyによる倒置構文です。この倒置構文では単純に主述を「倒置」させましたが、完了形、進行形、受身形、助動詞などの場合には、動詞の原形である本動詞の身代わりとして、have動詞、be動詞、助動詞などが主語と入れ替わることがあります。

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二、分析②(理論) 
「強意の副詞」onlyは文中の至る所で、しかも被強調語の前後に配置されます。その場合の訳出は、副詞onlyの構造的機能だけによって被強調語との間で訳出しても、英文では理解できても日本語にそのままの形で言語変換することはできません。

要するに、英文の表現法と日本語の表現法が異なることから、日本語の表現法に従って修正しなければならないということです。

その場合に注意しなければならないことは、言うまでもなく英文の強意表現法を熟知し、その表現法による原文の文意を明確に掴み、その真意を正確に日本語へ変換するということです。

そこで、そのための手がかりになるのが、上記の構造式と展開式であり、それに基づいて訳出することになります。(類題)で示した場合も構造式と同様に訳出することができます。

まず、構造式と類例の訳出ですが、副詞onlyの構造的機能に従って、上記の構造式では「(ほんの)Sだけ(のみ)」と訳出しますが、この訳出による日本語表現が不適切である場合には、展開式に従ってit~thatの強調構文で訳出することになります。要するに、目的語から訳し上げることになるのです。

上記の課題文は主部に長い付加的構造物があるために、英語表現では副詞onlyによる強調が可能ですが、短い主語(無主語と言ってもよい)の日本語では不自然な表現法となります。

「主語と目的語の関係」は、「主語と補語」との関係と同様に、英語においても日本語においても入れ替えることが可能だということです。