「課題文」
President Biden told the American public in an Oval Office address on Wednesday that he had abandoned his re-election campaign because there is “a time and a place for new voices, fresh voices — yes, younger voices.”

His words, lasting 11 minutes in all, were the first extensive ones from Mr. Biden since his decision to step aside, and expanded on his initial announcement, delivered in a post on social media on Sunday, that he was dropping out of the race. His tone was wistful and his speech was an early farewell.

“It’s been the privilege of my life to serve this nation for over 50 years,” he said.

Sitting behind the Resolute Desk and surrounded by photos of his family, Mr. Biden ticked through the accomplishments of his term, ranging from the choice of the first Black woman to be a Supreme Court justice to pulling the country out of a paralyzing pandemic. He expressed gratitude to the American people for allowing a “kid with a stutter” from modest beginnings in Scranton, Pa., to reach the pinnacle of American politics.

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「訳例」
バイデン大統領は水曜日、大統領執務室からの演説で、米国民に向けて次のように語った。彼が再選に向けた選挙活動を中止したのは、「新しい声、新鮮な声、その通りもっと若い人の声にふさわしい時と場所」が用意されているからだと語った。

全部で11分間に及ぶバイデン氏の演説は、彼が選挙戦から身を引くことを決意してから初めての大々的なもので、選挙戦から撤退することになるという日曜日にSNSに投稿した最初の表明を詳しく述べるものだった。彼の口調には物悲しさがあり、一足早いお別れの言葉となった。

「50年以上にわたり米国に尽くせたことは、私の人生において名誉なことだった」と語った。

大統領執務机を前にして座り、そして家族の写真に囲まれて、バイデン氏は、黒人女性を初めて連邦最高裁判事に指名したことから、米国をCovid-19による深刻なパンデミックから救い出したことに至るまでの在任中の実績を一つ一つ振り返った。また、彼はアメリカ国民に対してペンシルベニア州スクラントンの貧しい家庭に育った「吃音のある子ども」が米国政治の頂点に立つことのできたことへの感謝の意を表明した。
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一、分析①(概説)
第4段落:Mr. Biden ticked through the accomplishments of his term, ranging from the choice of the first Black woman to be a Supreme Court justice to pulling the country out of a paralyzing pandemic.

□ the choice of the first Black woman to be a Supreme Court justice

構造式(1):the choice of the first A to be B

⇒ choose +A to be +B (V+O+C:chooseの構造的機能)
                
         構造式(2):the choice of the first A

             ⇒ choose +A(V+O:ofの目的格用法)

        構造式(3):the first A to be B(S+V:the first~ to-infの関係)           

今回のテーマは、「前置詞ofの用法とto不定詞の用法」についてです。

前半では今回の課題を巡るポイントを構造的に(構造式・展開式で)示し、そして後半では、その構造式・展開式の捉え方及び訳出法を明らかにします。

構造式(1)は、展開式に示したように動詞chooseの構造的機能を説明したものです。そして、その前提として構造式(2)において、名詞choiceと前置詞ofの関係を示したものです。

そして、構造式(2)の展開式は、名詞choiceを元の他動詞chooseに戻した場合、直後の前置詞ofは自らが抱える目的語Aを他動詞chooseとの間でどのような働きをするのか?を示したものです。それを前置詞ofの目的格用法と呼んでいます。

構造式(3)は、the firstの修飾語のついた名詞Aとその直後のto不定詞との関係を示したものです。

このto不定詞は、本動詞chooseの構造的機能から言えば、「目的格補語」に該当するものであり、他方the firstの修飾語のついた名詞Aとの関係でいえば、「不定詞の形容詞的用法」ということになります。

そのいずれの場合も、直前の名詞Aとの関係でいえば「nexus法則(主述関係)」が成立するものであり、問題とはなりません。しかし、これらの構造分析による訳出になると、大いに問題が生じるのです。
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二、分析②(理論) 
先ず、構造式(2)について説明したように、名詞the choiceと名詞Aとの間には前置詞ofの働き、即ち「目的格用法」によって「V+O」の関係が生じることになります。従って、その訳出は「Aを選択する」ということになります。

次に、構造式(3)も上記で説明したように、修飾語the firstのついた名詞Aと直後のto不定詞との間には「不定詞の形容詞的用法」が成立し、それによって両者の語句間には「被接続語(名詞)+接続語(不定詞)」の関係が成り立つことによって、構造論において「nexus法則(主述関係)」が生まれます。

ここで問題になるのは、構造式(2)と(3)によると、本動詞chooseは「完全他動詞」ということになり、従って後方のto不定詞は本動詞chooseの構造的機能によって構成される「主要構造物」ではなく「付加的構造物」ということになります。

これは、あくまでも後方のto不定詞を直前の名詞Aに修飾する修飾語the firstの構造的機能による決定となります。

しかし重要なのは、英文構造を最終的に決定するのは、本動詞の「構造的機能」であるころから、この課題での本動詞chooseの構造的機能は構造式(1)が示す「不完全他動詞」であるということです。

従って、訳出に際しては修飾語the firstに配慮しつつも、完全他動詞ではなく不完全他動詞としての本動詞chooseの構造的機能に従って訳出しなければなりません。